世界初、互いの周りを公転する2つのブラックホールを直接観測 インド – Science Portal Asia Pacific


インド科学技術省(MoST)は10月10日、アリャバッタ観測科学研究所(ARIES)とタタ基礎研究所(TIFR)などの国際研究チームが、互いの周りを公転する2つのブラックホールを世界で初めて直接観測したと発表した。研究成果は学術誌Astrophysical Journalに掲載された。
研究チームは、地球を遠く離れた軌道上を周回する宇宙望遠鏡ラジオアストロン(RadioAstron)を含む望遠鏡ネットワークを用いて、遠方のクエーサーOJ287を観測した。その結果、12年周期で互いを公転する2つのブラックホールを確認した。OJ287は1つの巨大なブラックホールではなく、連星ブラックホール系によってエネルギーが供給されていることが示された。
ラジオアストロン望遠鏡システムで観測された互いに周回する二つのブラックホール(右)とその図解説明
(出典:PIB)
OJ287の周期的な光変動は19世紀の写真記録にも遡ることができ、1982年にその周期性が確認されて以来、世界各地の天文学者が追跡観測を行ってきた。軌道解析は2018年に米国の天体物理学ジャーナル、2021年に英国王立天文学会の月報で報告されている。
2021年末、ARIESのシュバム・キショア(Shubham Kishore)氏とアロック・C・グプタ(Alok C. Gupta)氏、米国のニュージャージー州立カレッジのポール・ウィータ(Paul Wiita)氏は、NASAのTESS衛星を用いてOJ287の急激な増光を観測した。わずか12時間で数百個の銀河に匹敵する明るさに達し、ポーランドのヤギェウォ大学のスタシェク・ゾラ(Staszek Zola)氏が主導した地上観測でも同様の現象が確認された。
さらに、ラジオアストロンによる高解像度の電波画像で、2つの明確な電波放射源が観測され、それぞれが理論モデルで予測された位置に一致した。小さい方のブラックホールが高エネルギー粒子のジェットを放出しており、その方向が軌道運動に伴って変化する様子も明らかになった。この結果、OJ287が連星ブラックホール系であることが実証された。
OJ287の観測は今後も地上望遠鏡によって続けられ、2つのブラックホールが放つジェットの動きやその変化が詳細に追跡される見込みだ。こうした観測は、重力波を放つ連星ブラックホールのふるまいを理解するうえで貴重な手がかりを与えるものである。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
発表論文:Valtonen et al. (2025) RadioAstron observations of OJ 287: resolving two compact radio components.
参考サイト(外部サイト):
● インド政府報道情報局(PIB)
https://www.pib.gov.in/PressReleasePage.aspx?PRID=2177369
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