量子センシング技術視察と液体ヘリウム極低温施設開所 インド – Science Portal Asia Pacific


インド科学技術省(MoST)は11月24日、インドのジテンドラ・シン(Jitendra Singh)科学技術相が、インド工科大学ボンベイ校(IIT-B)の量子研究ラボを訪問し、量子センシング技術の実証成果を視察し、新設の液体ヘリウム極低温施設の開所式を行ったと発表した。
(出典:PIB)
視察ではまず、ナノテスラ(nT)スケールの超低磁場を測定できるインド初のポータブル磁力計QMagPIが紹介された。これは、ダイヤモンド中の原子レベルの欠陥である窒素空孔(NV)センターを利用して開発されたデバイスで、戦略分野、防衛用途、鉱物探査、科学計測などへの応用が見込まれる。続いて、PQuestグループが開発したインド初の国産量子ダイヤモンド顕微鏡(QDM)が披露された。QDMはナノスケールの3次元磁場を広視野で可視化でき、AI(人工知能)/ML(機械学習)技術と組み合わせることで神経科学、材料研究、半導体診断などで革新的な利用が期待される。ヘルスケア分野では、量子共焦点顕微鏡Q-Confocalが紹介された。これはNVセンターを持つナノダイヤモンドを利用し細胞内変化、特に活性酸素種(ROS)濃度を高感度に検出する。
視察後には液体ヘリウム極低温施設の開所式が行われた。本施設は極低温工学、超伝導、量子コンピューティング、量子センシング、フォトニクス、へエルスケア技術、そしてグリーンエネルギーデバイスにおけるインドの能力を向上させる基盤的な国家研究インフラとなる。産業界、大学、研究機関に解放されるこの施設は、世界で最も希少な資源の1つであるヘリウムの高効率回収システムを備え、実験コストをおよそ10分の1に削減するとされる。世界的な需要が高まっている量子コンピューターは10mK(約−272℃)という超低温で動作する希釈冷凍機に依存する。液体ヘリウム施設の稼働は将来的な国産希釈冷凍機開発の基盤となり、長期的な技術自立にもつながると期待されている。
同相は、量子ラボと極低温施設は次世代科学技術におけるインドのリーダーシップを反映しており、これらの成果はインドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相が掲げる「Viksit Bharat(先進国インド)」のビジョンと合致していると強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
参考サイト(外部サイト):
● インド政府報道情報局(PIB)
https://www.pib.gov.in/PressReleasePage.aspx?PRID=2193757&reg=3&lang=2
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