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2月11日は建国記念の日である。高市首相は建国記念の日を祝し、自身のSNSで国民に向けたメッセージを発信した。その中で高市首相は、「今日、科学技術や文化芸術を始めとする多くの分野で、我が国は国際社会から高い評価を受け、人類の営みに貢献しています。」と述べている。
この一節は、現代の文脈においては、情報通信基盤の強靭性と先端技術の社会実装力を問う言葉として読み取ることができる。国際社会からの「高い評価」や「人類の営みへの貢献」とは、目立つ成果の有無だけではなく、通信や計算、データ、セキュリティといった国家基盤が、信頼性(止まりにくさ・守られやすさ)、継続性(保守と更新が回り続けること)、相互運用性(国際標準と接続できること)を備えているか、という評価でもある。
いま「国の発展」を左右するのは、単発の技術成果そのものではなく、通信、計算、データ、セキュリティ、標準といった要素が連鎖し、その連鎖が途切れない形で日常へ組み込まれているかどうかである。AIも量子も、研究室の成果がそのまま国力へ直結するわけではない。電力、データセンター、海底ケーブル、クラウド、半導体、ソフトウェア、制度、そして国際連携が結び付いて初めて、社会の能力として立ち上がる。
この観点から情報通信を捉えると、課題は二つに整理できる。第一に、デジタルが生活と産業の前提となった以上、攻撃や障害の局面でも止まりにくい設計それ自体が、国家の公共性の中核になった点である。サイバー攻撃、サプライチェーンの寸断、災害時の通信途絶は、いまや経済問題であると同時に、安全保障と人命の問題でもある。第二に、AIの普及が情報通信の意味を変えつつある点である。AIは「便利な道具」に見える一方で、計算資源とデータ、基盤ソフト、運用体制を抱える側へ価値と主導権が集まりやすい。つまり、AI時代の競争は、モデルの性能だけでなく、基盤インフラと運用能力を含む総合力の競争でもある。
量子技術は、これとは別の仕方で同じ基盤問題に重なってくる。量子コンピュータはしばしば「万能の計算機」として語られるが、政策的には、量子通信、量子暗号、量子センシングを含む広い技術群として、社会へ段階的に接続されていく領域である。量子を社会で使える状態にするための量子レディや、AIなど他の基盤技術との統合が強調されるのも、量子が直ちに生活を変える魔法ではなく、通信の信頼性、計測の精度、セキュリティ設計を底から更新し得る基盤技術として位置づけられているためである。だからこそ、研究開発と並行して、標準化、人材育成、実証の場、産業化の回路を途切れさせないことが国家の課題となる。
では、日本はこの分野で弱いのか。結論から言えば、分野ごとに強弱が明確に分かれる、という整理が最も正確である。
AIについては、巨大な計算資源とプラットフォームを持つ国や企業へ重心が傾くなか、日本は「基盤モデルを世界標準として握る」という点では相対的に不利になりやすい。投資規模、クラウドの支配力、データセンターの集積、研究成果の事業化速度といった要因で差が生じやすいからである。他方で、日本には別種の強みがある。製造業、ロボティクス、精密機器、部素材、電力・熱・冷却といった、AIを動かし支える現物の基盤が厚い。つまり、ソフトウェア覇権とは別の場所で、AI時代のインフラと産業実装を支える力は保持し得る。評価軸を「モデル開発」だけに置けば弱く見えるが、「社会実装」「産業化」「信頼性」の軸では伸ばし得る余地が大きい。
量子についても同様である。量子は研究の競争であると同時に、エラー耐性、低温技術、計測・制御、部材、運用といった工学の積み上げで勝負が決まる領域であり、日本の産業構造と相性がよい面がある。他方で、量子もAIも、最後は人材と市場の設計に帰着する。研究が強くても、実証から産業化までの距離が長いままでは、国際社会が評価する「継続的に成果を生む仕組み」になりにくい。したがって弱点は、技術の芽そのものより、芽を太らせる資金循環、調達、規制運用、標準化、国際連携の速度に現れやすい。
建国記念の日を、過去の達成を称える日にとどめず、未来の基盤を点検する日と捉えるなら、今日の科学技術の要点は三つに収れんする。第一に、情報通信とサイバーの強靭性を公共財として維持すること。第二に、AIと量子の「研究」だけでなく「運用と実装」を担う人材と場を厚くすること。第三に、国際社会からの評価を、成果の誇示ではなく、透明性、信頼性、継続性という信用の設計として受け止め直すことである。これらが整うとき、メッセージが語る「希望」は精神論ではなく、次世代が挑戦を現実に変えられる条件として具体化する。
西洋哲学の視座から、国際安全保障(リアリズム理論)、AI・サイバー抑止と制度設計、ホロコースト記憶のデジタル化を扱う歴史情報学を統合的に研究。安全保障・記憶・技術・政治哲学(倫理・規範理論)・情報空間を横断し、社会を構成する諸要素を統合的に分析。国家の生存戦略と倫理的記憶の継承を、デジタル技術・アーカイブ・制度の枠組みから捉え、社会デザインの観点から人間の尊厳を支える持続的構造を体系的に示す。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。著書・論文多数。
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