
シンガポール国立大学(NUS)は2月7日、3Dコンクリートプリンティング(3DCP)で構造部材をより環境に優しく、材料と労働力を削減して製造しつつ必要な構造性能を満たせることを実証したと発表した。研究成果は学術誌Construction and Building Materialsに掲載されたと発表した。
NUSデザイン工学部(CDE)のドゥ・ホンジャン(Du Hongjian)上級講師(左)とパン・スィー・ダイ(Pang Sze Dai)准教授
都市の高密度化や人手不足を背景に、建設現場では工期短縮と省人化が課題となっている。3DCPは型枠不要で自動化しやすい一方、シンガポールでは非構造用途が中心だった。NUSデザイン工学部(CDE)のドゥ・ホンジャン(Du Hongjian)上級講師とパン・スィー・ダイ(Pang Sze Dai)准教授のチームは、3DCPを実建設で使える技術にするため、材料配合と施工ワークフローの両面を検証した。
研究チームは押し出し性や施工性、構造補強性、そして既存の構造部材製造との互換性を考慮した印刷用コンクリートミックスを開発した。また、既存のプレファブリケーション及び現場施工に合う製造ワークフローを定義した。実験室試験と大規模試験では、補強した3DCP構造要素が必要な耐荷重性能を満たしつつ、従来設計より材料使用量を大幅に減らせることを確認した。さらに業界評価に基づく試算では、複雑な部材で40%超の省人化と60%超の効率向上が見込まれ、材料使用量も従来工法より30%少ないと推定された。
建設・建築分野のパートナーと連携し、NUSの研究者らは革新的な3Dコンクリートプリンティング技術を実際の建設現場に導入。これによりプロジェクトの迅速な完了、省人化、二酸化炭素排出量削減、設計されたモジュール建築における柔軟性の向上が実現
(出典:いずれもNUS)
研究チームは、シンガポールの建設会社ウォー・ハップ(Woh Hup)社と協力し、現場での施工性や既存工程への組み込みも検証した。2025年8月にはシンガポール建設庁(BCA)の確認を受け、シンガポールで初めて構造要素のオンサイト3DCPを実施し、工数を50%削減したという。2026年1月29日には2回目の現場印刷を開始し、運用条件下での検証を進めている。
さらに環境面では、印刷用コンクリートで高くなりがちなセメント使用量の削減にも取り組んだ。普通ポルトランドセメントの60%をリサイクル廃ガラス粉末に置き換え、崩壊や変形なく実物大要素を印刷でき、圧縮強度は50MPa超を達成した。従来の印刷用コンクリートに比べ、内包エネルギーを44%、CO2排出を52%削減し、塩化物浸透への耐性も向上したとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
発表論文: Bong et al. (2026) High-volume glass powder cementitious material for low-carbon concrete additive manufacturing
参考サイト(外部サイト):
● シンガポール国立大学(NUS)
https://news.nus.edu.sg/advancing-sustainable-3d-concrete-printing-for-the-construction-industry/
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