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日本の科学技術政策を方向付ける第7期科学技術・イノベーション基本計画が近く決定される。特徴は“人類”のための科学技術から“国家”のための科学技術へと重心を移した点だ。国家安全保障と戦略的科学技術外交が導入・強化される。それぞれ経済安全保障の戦略的自律性と戦略的不可欠性に対応し、日本が他国に依存せず、また他国にとって不可欠な存在になることを目指す。課題は安全保障は官僚主義の波及抑制、科技外交は海外をめぐりイノベーションの芽を育てる人材の確保だ。どちらも産学官で取り組む必要がある。
「新しい要素は国家安全保障と戦略的科学技術外交。日本だけでなく、世界がこの方向に進んでいる」と科学技術振興機構(JST)の橋本和仁理事長は基本計画素案についてこう評価する。同基本計画は5年に1度策定され、第7期は2026―30年度の関連政策の土台になる。
第4期(11―15年度)では社会課題の解決を目指して科学技術政策とベンチャー育成などのイノベーション政策の一体化が進められた。第5期(16―20年度)では社会課題から産業課題に重心が移る。サイバー空間とフィジカル空間が融合した超スマート社会「ソサエティー5・0」を掲げ、この具体化を自動運転やエネルギー、物流、医療などの産業分野で進めた。開発技術とビジネスモデルの統合を志向した。
コロナ禍の最中で始まった第6期(21―25年度)では一人ひとりの多様な幸せとしてウェルビーイング(心身の幸福)を掲げた。気候変動や生物多様性劣化などの世界的課題に対して国際社会が連帯する重要性を説いた。
ただ米中対立の先鋭化は止まらず、自国第一主義が世界を動かしている。第7期では科学技術と国家安全保障の有機的連携と戦略的科学技術外交が基本計画の柱となった。振り返ると、社会から産業、人類、国家へと重心を移してきている。
この過程で科学技術への投資が膨らんできた。第6期では政府の研究開発投資は30兆円、官民合わせた研究開発投資総額は120兆円を目標に掲げた。政府投資を呼び水として90兆円の民間投資を促すというもくろみだった。実際には第6期の政府投資は43兆6263億円、官民投資額は百十数兆円にとどまると見込まれている。官民の投資割合は1対2。第7期では現状を上回る政府投資を目標に掲げる意向だ。これは呼び水を超え、民間企業の稼ぎ口になる規模になる。
政策研究大学院大学の林隆之教授は「安全保障など、国が目標を設定して民間企業を動員して実現する。この流れで官の投資割合が大きくなること自体はおかしくない」と説明する。第6期では経済産業省予算が急増して文部科学省予算と同規模になり、それぞれ政府投資の3分の1強を占めている。経産省予算の大部分が民間に投資される。国土交通省や防衛省などの予算も事業者が中心だ。
ただ民間企業が国の予算を使うと、その事務手続きを介して官僚主義が組織に波及し、過剰な規則に縛られる問題がある。第7期で予算増額が見込まれるのは安全保障関連の分野だ。拘束性が強く、中長期的な影響を注視する必要がある。
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