
インド理科大学院(IISc)は2月23日、かゆみとストレスの関係に関わる脳内神経回路を特定したと発表した。研究成果は学術誌Cell Reportsに掲載された。
かゆみと痛みはいずれも有害な刺激によって引き起こされる不快な感覚だが、痛みは回避行動を、かゆみは掻く行動を誘発する。ストレスや不安などの感情状態がこれらの感覚に影響することは知られていたが、ストレスがかゆみに与える影響の神経メカニズムは十分に解明されていなかった。
本研究では、ストレスや感情状態の調節に関与する脳領域である視床下部外側野(LHA)に注目した。研究チームは遺伝子組み換えマウスモデルを用いて、急性ストレス時に活性化する特定のニューロン群を特定した。さらに、これらのニューロンを人工的に活性化すると、化学刺激による短期的なかゆみモデルと乾癬様の慢性かゆみモデルの両方で掻く行動が減少した。一方でこれらのニューロンを抑制すると、ストレスによるかゆみ抑制効果は消失した。これにより、このニューロンがストレスによるかゆみ抑制に必要かつ十分であることが示された。
研究を主導したIISc神経科学研究センター(CNS)のアルナブ・バリック(Arnab Barik)助教授は、視床下部外側野の特定のニューロンが急性ストレス時のかゆみを抑制し、感情状態と感覚知覚を脳が直接結び付ける仕組みが明らかになったと説明した。
また研究では、慢性炎症を伴う乾癬様モデルでは同じニューロンの活動が変化し、かゆみを抑制する機能が弱まる可能性も示された。慢性的なかゆみは世界で多くの患者が苦しむ症状であり、現在の治療は主に皮膚や免疫系を対象としているが、今回の成果は脳の神経回路を標的とした新たな治療法開発につながる可能性があると研究者らは語る。
研究者らは、今回の研究は急性ストレスの一種を調べたものであり、さまざまな種類のストレスがかゆみにどのように影響するかについても、他の脳回路も関与している可能性が高いと指摘している。今後の研究では、これらのニューロンの分子特性を特定し、特に慢性疾患において、ストレス関連回路が長期的な時間スケールでどのように変化するかを解明することを目指している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
発表論文: Prajapati et al. (2026) Lateral hypothalamus directs stress-induced modulation of acute and psoriatic itch
参考サイト(外部サイト):
● インド理科大学院(IISc)
https://www.iisc.ac.in/events/how-the-brain-suppresses-itch-during-stress/
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