細菌の遺伝子制御の定説覆す研究成果を発表 インド – Science Portal Asia Pacific


インド科学技術省(MoST)は3月2日、同省傘下のボーズ研究所と米国のラトガース大学の研究チームが、細菌の遺伝子制御に関する約50年続いた主要なモデルを覆す研究成果を発表したと報告した。研究成果は学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)に掲載された。
これまで生物学では、細菌が遺伝子の転写を始める際に働く「σ因子」は、RNAポリメラーゼに結合して転写開始を助けた後、転写の伸長段階に入ると離れると考えられてきた。この「σサイクル」の考え方は、主に大腸菌のσ70 の観察に基づき、教科書的な説明として広く受け入れられてきた。
これに対し、研究チームは、枯草菌の主要な転写開始因子σA と、大腸菌のσ70 因子の改変型は、転写開始後に放出されるのではなく、転写全体を通じてRNAポリメラーゼに結合したままであることを示した。これは、従来の理解が全ての細菌に共通するわけではないことを意味する。
研究では、生化学的アッセイ、クロマチン免疫沈降法、蛍光イメージングを組み合わせ、シグマ因子の挙動をリアルタイムで観察した。その結果、枯草菌のσA と、1.1と呼ばれる部分を欠く大腸菌のσ70 変異体は、転写複合体と安定的に結合したままである一方、全長の大腸菌σ70 は伸長中に確率的に放出されることが分かった。
(出典:PIB)
ボーズ研究所のジャヤンタ・ムコパディヤイ(Jayanta Mukhopadhyay)氏は「私たちの研究は、枯草菌においてσA 因子が転写過程全体を通してRNAポリメラーゼに結合したままであることを示しています」と述べた。共著者のアニルッダ・テワリ(Aniruddha Tewary)氏は「これらの発見は、長らく受け入れられてきたσサイクルが全ての細菌に当てはまるわけではないという説得力のある証拠を提供するものです」と語った。
この成果は、細菌の遺伝子制御やその進化の理解を進めるだけでなく、感染機構を阻害する抗生物質や制御阻害剤の設計、バイオ燃料、生分解性プラスチック、治療用化合物を効率よく生産する微生物の設計にもつながる可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
発表論文:Tewary et al. (2025) Bacillus subtilis σA and Escherichia coli σ70 lacking σ region 1.1 are not released during transcription initiation and elongation.
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