
本報告書は、地政学的緊張の高まりと科学技術の急速な進展を背景に、国家戦略上の重要性を一層増している「科学技術外交」について、科学技術イノベーション(STI)政策の観点から国際的な潮流、課題、主要枠組み、関係主体の動向を整理したものである。前回報告書(2025年)を改訂・拡充し、新たな政策動向や国際的議論を反映している。
AI、量子技術、半導体、バイオテクノロジーなどの新興技術は、短期間で社会実装され、経済のみならず安全保障や国家戦略の中核に位置付けられるようになった。これに伴い、STI政策は産業政策や安全保障政策、外交政策と一体化し、その対象と目的は国益にとどまらず、地域・同盟益、さらには国際公共益へと拡大している。また、科学技術外交の担い手も、政府やアカデミアに加え、民間企業やNGOなど非国家主体へと広がっている。
こうした変化を受け、科学技術外交の概念や実践を再構築する動きが国際的に活発化している。特に、英国王立協会と米国科学振興協会が発表した「分断と混乱の時代の科学外交」では、従来の三要素モデルを簡素化し、「科学が外交に与える影響」と「外交が科学に与える影響」という二次元の枠組みを提示した。また、欧州委員会は、科学技術を地政学的資源と捉え、戦略的利益と価値を守るための「欧州科学外交フレームワーク」の策定を進めている。
さらに、インド、南アフリカ、ASEAN諸国をはじめとするグローバルサウスにおいても、科学的助言体制や科学技術外交の制度化が進展している。こうした国際的な協調と競争が併存する中で、科学技術外交は国際関係を形成する重要な手段として位置付けられている。
本報告書は、科学技術外交をめぐる世界的な構造変化を俯瞰し、日本が今後採るべきSTI政策および外交戦略とその具体的方策を検討するための基礎的な知見を提供することを目的とする。なお、本報告書では、欧米で用いられるScience Diplomacyと「科学技術外交」を同義として扱っている。
※本報告書の参考文献としてインターネット上の情報が掲載されている場合、当該情報は2026年3月11日時点でのアクセスを確認しているものです。
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