量子ノイズが量子もつれを再生・生成する可能性を発見 インド – Science Portal Asia Pacific


インド科学技術省(MoST)は7月14日、インドのラマン研究所(RRI)の研究により、量子ノイズが単一粒子内の量子もつれ(粒子内エンタングルメント)を生成する可能性を発見したと発表した。研究成果は学術誌Frontiers in Quantum Science and Technologyに掲載された。
量子もつれは、空間を超えて粒子同士を結びつける量子力学の核心を成す現象であり、量子通信や量子コンピューティングの基盤技術となっている。従来、量子ノイズは量子もつれを破壊する要因として知られていた。
今回、RRIとインド理科大学院(IISc)、インド科学教育研究大学(IISER)コルカタ校、カナダのカルガリー大学の研究者らは、粒子内もつれに注目し、3種類の量子ノイズ(振幅減衰、位相減衰、脱分極)下での挙動を解析した。その結果、振幅減衰ノイズにおいて、量子もつれを消去するだけでなく、特定の条件下においてはそれを復活させることを発見した。さらに、量子ノイズは粒子内において、当初から量子もつれのない状態においても、量子もつれを生成することができることも分かった。これはノイズは量子相関を破壊するだけでなく、構築にも役立つことを意味している。
一方で、粒子間もつれ(二粒子間の相関)はノイズにより単調に減衰し、再生や生成の兆候は見られなかった。これにより、粒子内もつれが量子的リソースとしてより堅牢であることが示された。本研究は、従来のように粒子の部分構造だけを扱うのではなく、単一粒子を全体として扱うグローバルノイズモデルを採用しており、より現実的な物理環境の再現に成功している。
RRIのウルバシ・シンハ(Urbasi Sinha)教授は「この知見は量子通信や量子コンピューティングに応用可能であり、単一光子系における実験への応用を進めています」と述べた。ボーズ研究所のディパンカール・ホーム(Dipankar Home)教授はこの成果に対して「まさに画期的な進歩です。粒子内もつれを用いて、さまざまなノイズが存在する状況において、ユーザーフレンドリーで商業的に実現可能な最先端の量子技術応用への未知の道を切り開くものです」と評価している。
本研究は、インドートレント先進研究プログラム(ITPAR)の一環として実施され、インド科学技術庁(DST)の国家量子ミッション(NQM)の支援を受けて進められた。
図1. 粒子間もつれ vs 粒子内もつれ
図2. 粒子内もつれにおいて、振幅減衰チャネルからのノイズはもつれを生成するだけでなく再生することも可能
(出典:いずれもPIB)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
参考サイト(外部サイト):
● インド政府報道情報局(PIB)
https://www.pib.gov.in/PressReleasePage.aspx?PRID=2144514
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