公益財団法人 隈科学技術・文化振興会~研究活動支援プロジェクト2026 ~特別鼎談 – 西日本新聞me


 公益財団法人「隈科学技術・文化振興会」(通称・隈財団、福岡県古賀市)は2026年度、世界に通用する人材育成を目的に科学技術、文化芸術の2分野において助成活動を行う。昨年度に続き2年目で、福岡で優れたプロジェクトに取り組む個人や団体を発掘・支援 し、研究や活動の発展へつなげる。財団の思いや求める人物像について、隈扶三郎代表理事=西部技研社長=と両分野の審査委員長(科学技術・高原淳氏、文化芸術・宮本初音氏)に語ってもらった。  (文中敬称略)
―隈財団の取り組みについて教えてください。
 九州大工学部で研究をした後に、西部技研創業者となった父・利實(としみ)は、自身も苦労した経験があり、苦学生に資金を援助していました。父の死去後、2代目社長となった私の母も遺志を継ぎ「隈基金」を設立。周囲の協力を得ながら、支援を継続しました。

 その後、活動域を拡大するため財団をつくり、昨年度からは父の思い入れがあった科学技術分野と、私が個人的に関心を持っている現代芸術への助成を行っています。  
―助成への反応はいかがでしたか。
宮本 福岡のアーティストにとって、かなりのインパクトがあったようです。助成事業は一般的に手続きが煩雑です。作品やプロジェクトを作り上げ、報告してからお金が出るシステムが大半です。一方、本助成はまだ形になっていない「リサーチ段階」でも応募ができるなど、柔軟な部分が喜ばれています。  
高原 理系の研究者は通常、国の科学研究費(科研費)を申請しますが、それに比べると金額が大きく、使途の自由度が高い点が特徴的です。採択までのプロセスもシンプルで、非常に評判が良いです。申請した額を満額で受け取ることができるのも、研究者にはうれしい点だと思います。単年度の助成制度が多い中で、3年というスパンで助成があるのも大きな特色。地域の科学技術力を推進する効果への期待も大きいです。  
 福岡に活動拠点がある人を対象としています。本当に助成が必要な地元福岡の人に、いかに支援できるか。専門家の皆さんに相談しながら仕組みを構築したことが良かったのだと思います。

公益財団法人隈科学技術・文化振興会代表理事 
株式会社西部技研代表取締役社長 
隈 扶三郎氏

くま・ふみお 1964年、福岡市生まれ。福岡大法学部を経て、87年に西部技研入社。米国企業への出向、専務取締役営業本部長などを経て、2002年から現職。スウェーデン、ノルウェーの在福岡名誉領事も務める。
―2026年度の募集について、昨年度からの変更点はありますか。
高原 科学技術分野は、対象分野を「環境・エネルギー」「医療・健康」( 昨年度は医療)「電子・情報」(昨年度は半導体)としました。より幅広い分野の応募が増えることが予測されます。 
宮本  文化芸術分野も大きく変わります。昨年度は比較的高額な助成が合計6件でしたが、今年度は最小の助成額が200万円から100万円になり、採択件数が12に増えました。また、グループだけでなく「個人の応募」も可能になります。制約が少なくなり、応募がしやすくなると思います。

科学技術分野 審査委員長 
九州大学 名誉教授・特任教授 高原 淳氏
 
たかはら・あつし 1955年、長崎県生まれ。九州大大学院工学研究科博士課程修了。同大工学部助教授や同大有機化学基礎研究センター教授、先導物質化学研究所教授・同所長などを経て現職。高分子学会会長も務める。
―審査のプロセスや内容について教えてください。
高原 審査員は限られた専門分野だけでなく、広い視野を持った第一線の研究者に入ってもらっています。複数の大学の先生がいるため、公正性も担保されています。書類だけでなく面接もしっかり行い、見落としがないように丁寧に審査します。 
宮本 文化芸術分野はアーティストや(展示企画などを担当する)キュレーターなど現場経験が豊富で、応募者の気持ちや情熱を理解できる40、50代の人たちに審査員をお願いしています。パフォーミングアートの専門家も加わり、審査体制を強化しました。  
―科学技術と文化芸術を並行して助成する財団は珍しいです。シナジーや刺激は期待できますか。
高原 長く続けていくうちに融合して生まれる研究が出てくると思います。自然科学・工学が芸術分野と融合することで新しい学問領域へと発展していく可能性は大いにあります。 
宮本 現代アートの近年の傾向として、「リサーチベース」の作品が増えています。この助成をきっかけに交流が生まれれば、複合的な価値観をもつ画期的なプロジェクトが誕生するのではないかと思っています。  
隈 初年度は別々だった両分野の発表を一緒にやってはどうかという話が出ています。さまざまなインタラクション(双方向性)と面白い化学反応が生まれればいいですね。さらに、社会実装のタネができるのではないかという夢も持っています。

文化芸術分野 審査委員長
ART BASE 88 代表、キュレーター 
宮本 初音氏
 
みやもと・はつね 1962年生まれ、福岡県出身。九州大医学部卒。京都芸術大通信教育部博物館学芸員課程修了。福岡市を拠点にアートプロジェクトの企画運営、芸術家支援事業などを行う。 元 ・ 福 岡 ア ジ ア 美 術 館 レ ジ デ ン ス事業コーディネーター。
―どのような方に応募してほしいと思われますか。
 父は40歳を過ぎて大学を飛び出し、起業しました。当時は非常に珍しい存在だったようで、周囲から少なからず反対もあったようです。リスクを恐れなかった父のように「チャレンジ精神」を持った方に来てほしいですね。「この助成金を土台 にして、九州から世界へ打って出てやる! 」。そんな野心を持った研究者やアーティストの応募を待っています。 
高原 基礎力を付け、世界で戦える研究をしてほしいですね。研究成果を積極的に内外に発信し、それをベースに世界に羽ばたいてほしい。 
宮本 福岡からアジア、そして世界各地へとつながるような独創的な企画を期待しています。前回、採択に至らなかった応募案もよく精査したうえで、今年度の要項が作られています。自信をもって応募してみてください。  
 
 西部技研創業者・隈利實の遺志を継ぐ「隈基金」を前身に1998年設立。大学院生らへの奨学金支給事業から始まり、後にNPO法人化。2004年に短歌を通じ、日本文化を伝承するための「筑紫歌壇賞」を創設。19年に一般社団法人、21年に公益財団法人認定を受けた。25年より福岡県から世界に羽ばたく科学技術・文化芸術の研究、活動助成を開始。
応募受付期間 2026年4月1日(水)~15日(水)
採否通知 2026年6月下旬~7月上旬
発 表 会 2026年7月31日(金) 
 
支援活動事務局 大脇 建 kumafound@seibu-giken.co.jp
〒811-3134 福岡県古賀市青柳3108ー3
tel:092-942-3511 
▼▼公式ページ下部各分野応募要項を確認の上、指定の方法で応募してください。▼▼

隈科学技術・文化振興会 ホームページ
 
※応募や助成内容等についてのお問い合わせは、原則Eメールにてお願いします。
Copyright The Nishinippon Shimbun. All rights reserved.

source