科学技術外交、世界からシーズ・事業者どう集めるか – ニュースイッチ by 日刊工業新聞社


イメージ
第7期基本計画では科学技術外交で日本の戦略的不可欠性を育てる必要がある。ただ現在機能しているのは政府の官僚機構が主導する仕組みだ。政府機能が整った先進国相手なら機能するが、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)には資金配分機関などのパートナー組織がない国もある。また日本は世界から優秀な人材や技術を集める仕組みが弱い。海外を巡るプログラムディレクター(PD)が要る。
「初めからすべてはできない。今は一つひとつ仕組みを作っている段階だ」と科学技術振興機構(JST)の橋本和仁理事長は科学技術外交について説明する。第7期基本計画の科学技術外交の章は具体的な計画が乏しく、JSTの事業を並べた構成となっている。予算と事業はあるが戦略が見えてこない。これは各国の事情や日本に何を求めているかが示されないためだ。
内閣府や文部科学省をはじめ、中央省庁は2年ごとに人事異動で人が変わる。米欧など先進7カ国はまだしも、東南アジアやグローバルサウス各国の状況を把握し、国ごとに施策を動かすには2年の任期は短い。そのため人材交流や国際ルール形成などの全体的な施策にとどまってきた。
それでも施策が動いているのは資金配分機関や大学に人脈を持つ人間がいるためだ。橋本理事長は「着任してからJSTは霞が関よりも人材が充実していることに気がついた。外交は顔が見える相手でないと難しい。ある程度長く務める必要がある」と語る。
橋本理事長は2022年のJST着任後、先進国やインド、東南アジア向けの協働連携事業を立ち上げてきた。特徴は相手国政府が自国の戦略に基づいて研究課題を選定し、その中から日本の研究者とマッチングしたプロジェクトに共同で投資する点だ。日本と相手国で、政府と学術界が目標を定めて協働する。両国の戦略にのっとるため、研究開発がうまく進めば戦略的不可欠性に育つ可能性がある。
ただし官僚機構が主導して実現できるのはここまでともいえる。相手国政府が収集できていない技術シーズや産業界の力を使うには、より多様な事業者を巻き込む必要がある。
ここでグローバルサウスや世界を巡ってシーズや事業者を集めるPDが重要になる。米国は世界から技術や人材が集まる構図があるが、それでもプログラムを成功させるためにPDが世界を巡る。米国よりも“吸引力”に乏しい日本はより積極的に海外から集める努力が必要だ。
政策研究大学院大学の林隆之教授は「国際協力機構(JICA)の協力が欠かせない。それだけでは足りず、さらにコミュニティーを広げる必要がある」と指摘する。松本洋一郎外務相科学技術顧問は「海外を巡るPDが大学で研究室を持ち、学生が学べる環境が望ましい」と指摘する。日本と世界の科学技術と政策をつなぎ、人材を再生産する場になる。官僚機構として推進する仕組みは機能し始めている。PDの配置でより強固で持続的な仕組みになると期待される。(おわり。小寺貴之が担当しました)
ニュースイッチは、日刊工業新聞のニュースやオリジナルコンテンツを、より新鮮に親しみやすく発信するサイトです。
専門的でありながら、わかりやすく楽しいコンテンツで、ビジネスに新しいスイッチを入れます。

source