【BUSINESS BIBLE SELECTION】グローバル、食堂車、温泉、多角化する鉄道ビジネスについて学べる3冊 – @DIME アットダイム


第一線で活躍する識者やライターなどが仕事に役立つおすすめの書籍を紹介する「DIME BUSINESS BIBLE SELECTION」。今回は鉄道ビジネスの世界を垣間見ることができる本をピックアップしました!
〈選者〉鉄道ジャーナリスト 梅原 淳さん
1965年生まれ。鉄道雑誌編集部などを経て2000年に鉄道ジャーナリストに。テレビやラジオでのコメント、講演も行なう。NHKラジオ第1『子ども科学電話相談』では鉄道部門の回答者を務める。
著/小林邦宏 集英社インターナショナル 858円
 日本も入札に参加したインドネシアの高速鉄道建設プロジェクトは、結局中国が落札した。高コストが日本落選の理由とはいえ、著者は完全な敗北と認めるべきだと述べる。そして、日本は自身の技術力を過信し、鉄道ビジネスの本質を見落としたのではと警鐘を鳴らす。
 本書の主役は中国で、アフリカにおける鉄道その他のインフラ事業への進出の様子が詳しく報告されている。その歴史は古く、1950年代からだという。長年にわたる地道な努力が実を結んだのだ。
 著者は、鉄道ビジネスにおける各国との付き合い方を日本式の「細く長く」から中国などの「太く短く」方式への転換を勧める。インドネシアの高速鉄道の建設では落札時の約1.3倍のコスト増となり、中国にも批判の矛先が向かったが、ドライに割り切る中国の手法を一部にしても見習ってもよいのかもしれない。
著/竹田正興 晶文社 1760円
 国鉄の分割民営化で、食堂車の営業や車内販売を手がけていた国鉄の関連会社の日本食堂も分割され、各JR旅客会社の傘下となった。だが、本体の日本食堂は消滅の危機に見舞われる。当時の同社には個人株主が多く、JR東日本はこのままでは同社の買収は無理と拒んだからだ。
 本書は、国鉄から日本食堂へと転じ、後に社長を務めた著者の竹田正興氏をはじめとする同社の社員たちの奮闘ぶりが記されている。同社が1996(平成8)年にJR東日本の直系子会社の地位を勝ち取った鍵は書名にある「正直改革」だ。個人株主への誠意ある交渉、不合理を排した営業体制への転換、豪華寝台特急「北斗星」のフレンチコースの開発といった品質向上策と努力を続けてきたからだ。子会社化後も統合が続き、いまは日本食堂の名はない。だが、その精神はJR東日本の列車や駅のなかで今後も残るはずだ。
著/笠井雅直 吉川弘文館 1980円
 首都圏、中京圏、京阪神圏からは様々な温泉地に向かうJRや私鉄の列車が多数運行され、特徴のある観光列車も多い。本書は温泉と鉄道とのかかわりを明治期の鉄道開業時から丹念にまとめた力作だ。明治初期に全国最多の温泉客を集めていたのは愛媛県松山市の道後温泉で、だからこそほかの地区に先がけて鉄道が開通したとの記述には説得力がある。
 今日の有名温泉はかつて湯治場であったが、鉄道の開通によりほかのレジャーとも組み合わせられて一大観光地へと変革を遂げた。鉄道としても年間を通じて安定している温泉への輸送需要は経営面でありがたい存在だ。
 海外でも湯治の習慣はあり、ドイツのバーデン・バーデンが知られる。こうした目的でのインバウンド需要が増えれば、温泉や鉄道は新たな発展の過程を迎えるのではと著者は示唆して本書を結ぶ。
撮影/黒石あみ 編集/寺田剛治
25年前にSuicaが誕生してから、各鉄道会社は旅客輸送以外の分野を含め、新たなサービスの提供を進めてきた。ここ最近ではさらに進化し、「貨物新幹線」「無人運転」「推し活」など時代に合わせたサービスや事業を拡大している。中でもJR東日本は「Suica Renaissance」を掲げ、Suicaのアップデートを進めている。今月号のDIMEでもそんな進化する鉄道を大特集、注目のキーワードと共に紹介している。

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