〈社説〉科学技術計画 危うい軍民両用の推進 – 信濃毎日新聞デジタル


 科学技術と安全保障政策が一体化し、産業界や科学者が動員される危うい流れが一気に強まりかねない。
 政府の「第7期科学技術・イノベーション基本計画」である。本年度から5年間の政策の指針となる。
 「科学技術と国家安全保障との有機的連携」を柱の一つに据えている。軍事にも民生にも利用可能なデュアルユース技術の研究開発を推進すると初めて明記。産学官の連携を掲げ、既存の防衛産業に限らず、新興企業や大学などに幅広く参画を促すとしている。
 高市早苗政権は、経済安保を重視し、防衛産業の強化を経済成長につなげる考えだ。計画によって「軍産学複合体」の形成が一気に進み、平和主義が形骸化されることを危惧する。
 戦後、日本の科学界は戦争目的の研究に従事した戦中の反省から軍事と一線を画してきた。
 科学者を軍事研究に取り込む動きが目立つようになったのは、安倍晋三政権からだ。2015年度には防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」をスタート。軍事技術に応用可能な基礎研究を募って助成している。
 今回の計画は、科学技術を「安全保障の観点からも国家の存立を左右する核心的要素」と位置付けた。重点支援の対象としてAIや半導体、防衛関連産業など17分野を選定。計画の推進に官民で180兆円を投じる目標を掲げる。
 安保との連携では、防衛省が行う基礎研究に研究者が「躊躇なく参画できるよう」各省庁が協力するとした。軍民両用技術への投資は、技術力を相互に高め、産業競争力の強化や長期的な経済成長にも資するとする。
 一方、計画は経済安保の観点から重要技術の保護を重視する。安保と外交、科学技術政策を一体的に進める「戦略的科学技術外交」も進めるとした。AIやバイオなどの領域で同志国などとの「協働」を深化させるという。
 実際は研究の成果が軍事に偏るのではないか。研究が政府に管理されれば、学問の自由や大学の自治も奪われかねない。
 国立大の研究費などに使われる「運営費交付金」は減額が続き、基礎研究を低迷させてきた。自由な研究が十分に行える環境は後退している。
 科学技術は何のためにあるのか。政府主導で科学者も企業もこぞって戦争に突き進んだ過去を思い返す必要がある。原点に立ち返り、軍事にからめ捕られる状況を変えていかなければならない。

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