亜鉛表面から水を遠ざけ電池劣化を抑える添加剤を開発 インド – Science Portal Asia Pacific


インド科学技術省(MoST)は6月18日、同省科学技術庁(DST)傘下のナノ科学技術研究所(INST)の研究者らが、水系亜鉛イオン電池(AZIBs)の亜鉛金属表面に選択的に吸着し、内部ヘルムホルツ面(IHP)を制御する電解液添加剤を開発したと発表した。研究成果は学術誌ACS Electrochemistryに掲載された。
AZIBsは、リチウムイオン電池に代わる低コストで安全、持続可能な選択肢として注目されている。一方、亜鉛デンドライトの成長、水素発生反応(HER)、腐食、サイクル安定性の低さが実用化を妨げている。今回の研究は、高コストな材料再設計ではなく、界面工学でこれらの課題に取り組み、安全性と低コストを維持しながら電池寿命を延ばす戦略を示すものだ。
INSTモハリの上級研究員であるラメンドラ・スンダル・デイ(Ramendra Sundar Dey)博士が率いる研究チームは、1,3-ビス(1,3-ジカルボキシプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド(BDIM)を開発した。BDIMは亜鉛と相互作用しやすい酸素や窒素を含む部位を複数持つ。電池作動中、負に分極した亜鉛表面に優先的に吸着してIHPを占有し、界面から水分子を排除する。これにより、水に起因するHERや腐食などの副反応を減らし、デンドライト形成も抑制する。
研究チームは、グルタミン酸を水酸化ナトリウム(NaOH)と水に溶かし、グリオキサール、ホルムアルデヒド、酢酸を加えた混合物を窒素雰囲気下で70℃、24時間加熱した後、抽出・凍結乾燥してBDIMの結晶性粉末を得た。さらに、亜鉛析出機構を調べるため、直径約50µm未満の超微小電極(UME)と高速電位走査サイクリックボルタンメトリー(FSCV)を組み合わせた。UMEは高い走査速度を可能にし、FSCVは添加剤による電荷移動条件の変化を可視化する。これにより、界面での電荷移動と物質移動の速度論を直接調べることができた。
図: (左) 学術誌ACS Electrochemistry に採択された研究のカバー画像。電解液添加剤が亜鉛表面を制御する仕組みを示す。(右) 水素発生反応(HER)の抑制における、BDIM添加剤の亜鉛負極表面への効果の比較。
(出典:いずれもPIB)
同技術は、AZIBs、グリッド規模のエネルギー貯蔵、再生可能エネルギー貯蔵、電池の安全性・寿命向上技術に応用できる可能性がある。改良された亜鉛イオン電池は、再生可能エネルギー貯蔵やバックアップ電源に利用でき、電池寿命の延長と性能劣化の抑制により、保守費用の低減と持続可能なエネルギーインフラの信頼性向上につながることが期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
発表論文: Upreti et al. (2026) Exploring Water Restriction in the Inner Helmholtz Plane for Enhanced Zinc Anode Protection through Fast Scan Voltammetry with Ultramicroelectrodes
参考サイト(外部サイト):
JST
Copyright © Japan Science and Technology Agency

source