
Amazonが運営する動画配信サービス「Prime Video」が、3日都内で「Prime Video Presents 東京」という戦略発表会を開催し、これから配信される様々な作品に関するニュースを一気に発表したことで、大きな注目を集めています。
特に最も象徴的なニュースと言えるのが、「Prime Video」が今後2年間で日本発のオリジナル作品へのコンテンツ投資を2倍以上に拡大するという方針を発表したことでしょう。
実際に、その本気度を示すかのように発表会では、次々にPrime Originalの作品や独占配信作品が紹介され、それぞれの話題がSNS上で大きく拡散される展開になっています。
今回の「Prime Video」の力の入り具合を象徴していたのが、これまでのPrime Original作品の代表作といえる「沈黙の艦隊」の最新作が発表会の大トリを飾る形では無く、その後にさらに二つの大きな作品の発表が控えていた点です。
その一本目の作品が、12月15日からの世界独占配信されることが発表された嵐の活動終了までの軌跡を追ったドキュメンタリー『5 – 嵐という時間 -』です。
なにしろこのドキュメンタリーの総監督を務めたのは、さまざまなヒット映画を生み出していることで有名な是枝裕和監督。
さらに、9月15日からは嵐の過去のライブアーカイブ映像9作品も配信され、12月21日には、2026年5月31日に東京ドームで開催されたコンサート映像も配信されることも発表。
5月の嵐の活動終了で喪失感を感じていたファンにとっては、本当に手厚い対応が発表されたことになるわけです。
さらに配信サービスにおける嵐のドキュメンタリーの独占配信と言えば、記憶に新しいのは2020年の活動休止までの奇跡を追ったNetflixのドキュメンタリーです。
このドキュメンタリーは、当時テレビの顔だった嵐が配信サービスにドキュメンタリーを独占配信するということで大きな話題となり、当時まだ会員数が300万人程度だったNetflixが一気に会員数を増やすことに貢献したと言われています。
その嵐が、今回の活動終了までの軌跡を追ったドキュメンタリーに関してはNetflixではなくPrime Videoを選択したことになります。
今年は、NetflixがWBCの独占配信件を獲得したことが大きな話題になりましたが、実は前回のWBCの配信件を獲得していたのはPrime Videoでした。
ある意味では、こうしたNetflixとPrime Videoの間での激しいコンテンツの獲得競争を象徴する発表だったと言えるでしょう。
さらに、この嵐のドキュメンタリーの後に満を持して発表されたのが、『薬屋のひとりごと』の芦田愛菜さん主演での実写ドラマ化でした。
なにしろ『薬屋のひとりごと』といえば、全世界シリーズ累計部数5700万部を突破している大人気ライトノベルであり、アニメ版はシーズン2が海外のアニメ評価サイトで2025年に公開されたアニメの中で最高評価を獲得するなど、世界中で反響を呼んでいる作品です。
その分、日本のアニメファンからは、実写化自体に対して否定的な意見や不安な声も多数でているようですが、ポイントは今回の実写化が「グローバルヒットを日本から」というキーワードの元に実現している点でしょう。
なにしろ今回の『薬屋のひとりごと』の実写化は、アニメを手がけている東宝と、AmazonMGMスタジオの共同製作であることが発表されており、日本最高峰のプロダクションで作り上げた作品を240以上の国と地域への配信力を持つPrime Videoが世界配信する立て付けになっているわけです。
東宝は直近ではNetflixと提携して「ガス人間」が世界ヒットしたことでも話題になりましたが、東宝はPrime Videoとも世界向けの作品作りに挑戦するということになります。
今回のイベントにおいても、Prime Videoは利用率や会員数が日本最大の定額制動画配信サービスであることが強調されていましたが、実際にICT総研の調査では、Prime VideoがNetflixにも大差をつけて1位であるという調査結果が発表されています。
ただ、そのPrime VideoがNetflixの後塵を明確に拝しているのが、日本オリジナル作品の世界配信の実績です。
もちろんPrime Videoも「沈黙の艦隊」を筆頭に様々な日本オリジナルの実写作品を生み出して人気を博していますが、その対象はこれまで主に日本国内に留まっていました。
ライバルであるNetflixは、2022年には「今際の国アリス」シーズン2が非英語シリーズで世界1位を獲得するなど、既に複数の日本発のドラマシリーズを世界でヒットさせ続けていることを踏まえると、その差はまだ大きいと言えます。
ただ、そうしたPrime Videoの状況が変化の兆しを見せているのがアニメ作品です。
実は4月にPrime Videoで配信開始されたアニメ『日本三國』は、非英語圏テレビシリーズの世界2位にランクインするなど、世界で大きく話題になっています。
また昨年も4月に配信開始された「片田舎のおっさん、剣聖になる」が36カ国でトップ10入りするなど、Prime Videoでも日本のアニメ作品が海外で多く視聴されるようになっているのです。
こうした流れにPrime Video本社も注目していることは、今回の発表会に本社海外担当のケリー・デイ氏や、アジア・オセアニア担当のゴラフ・ガンジー氏が登壇し「次のグローバルヒットは日本から生まれると強く信じています」と日本に熱いメッセージを送っていたことからも良く分かります。
その結果として、今後2年間で日本発のオリジナル作品へのコンテンツ投資を2倍以上に拡大することが発表され、その本気度を示す作品として様々な実写作品やアニメ作品の発表がおこなわれたわけです。
今回の実写版『薬屋のひとりごと』は、明確に世界で成功することを前提とした実写ドラマ化であることは間違いないでしょう。
実は、日本発のコンテンツに注目しているのはNetflixとPrime Videoだけではありません。
Disney+も、2025年11月には日本IP強化へ投資拡大をおこなうことを発表しています。
参考:「世界が日本の作品を求めている」 ディズニー幹部、日本IP強化へ“投資拡大”も
世界が日本のコンテンツの可能性に注目しているからこそ、嵐のドキュメンタリーのような人気コンテンツの獲得競争が配信サービス間で激しくなり、世界で人気のアニメ作品や、東宝のような高い製作力を持つプロダクションがNetflixともPrime Videoとも作品作りに取り組む状況を生んでいると言えます。
こうした流れがさらに大きなうねりになっていくかどうかは、今後のPrime Videoの日本発作品が世界に拡がる実績を積み上げていくかどうかにかかっていると言えます。
まずは11月に公開される「地雷グリコ」の反響から楽しみにウォッチしたいと思います。
この記事は2026年9月4日Yahoo!ニュース寄稿記事の全文転載です。
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