新橋のビジネスパーソンもハマる「1L400円から」のデカい1杯…韓国発“大容量・低価格”カフェが続々と日本に上陸する背景 – Yahoo!ファイナンス


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MASS COFFEEの1リットルのアイスアメリカーノ。練乳追加(+100円)で税込み500円 (写真:筆者撮影)
 2026年8月、“大容量・低価格”を売りにする韓国発のコーヒーチェーンが相次いで東京・新橋に進出した。商品によっては700mlから1リットルほどにもなるドリンクを、手頃な価格で提供するのが特徴だ。

 こういった韓国発カフェのドリンクについて、ネット上の口コミでは、「Mでも十分大きい」「Lサイズ!  めっちゃ大きくてびっくり」など、そのサイズ感に驚く声が見られる。

■新橋に「大きなカップ」を手にするビジネスパーソンの姿
 実際に店舗やその周辺を歩いてみると、大きなカップを手にするビジネスパーソンの姿が――。新橋といえば、日本屈指のビジネス街として知られる。そこで今、何が起きているのか。

 取材から見えてきたのは、“映え”や話題性とは異なる、「毎日飲むコーヒー」をめぐる戦略だった。

 筆者が韓国で暮らしていた00年代序盤、食事の後にコーヒーを飲むのはごく日常的な光景だった。友人との食事でも、食べ終われば「次はコーヒー」という流れになることが多い。
 そんな韓国で、ここ10年ほどで浸透してきたのが、“大容量・低価格”のコーヒーチェーンだ。

 筆者の記憶でも、かつては店内で長時間過ごすカフェが主流だったが、今やテイクアウトで楽しむスタイルも日常に溶け込んでいる。

■25年から相次ぐ「韓国コーヒーチェーン」の日本進出

 25年のマンモスコーヒーの東京・虎ノ門への出店を皮切りに、日本にはこうした韓国のコーヒーチェーンの進出が相次いでいる。

 今回取材したのは、06年に韓国で誕生し、韓国で1800店舗以上を展開するPaik's DABANG COFFEE(ペクスダバン、以下Paik's DABANG)と、07年創業で現在韓国に約40店舗を展開するMASS COFFEE(マスコーヒー)だ。
 前者は8月6日、後者は同月17日に日本1号店を新橋にオープン。Paik's DABANGは早くも同月18日、2号店となる神田店もオープンした。

 MASS COFFEEは、“大容量・低価格”のコーヒーが韓国で根づいた理由について、「韓国では、コーヒーは嗜好品ではなく毎日の習慣です」と説明する。

 Paik's DABANGも「日常的に繰り返し購入するからこそ、手頃な価格と十分な容量への需要が高まった」と分析する。
 では、韓国で定着したこのスタイルを、なぜ今、日本へ持ち込もうとしているのか。

 日本にはすでに、スターバックスやドトールコーヒーをはじめとする多くのカフェチェーンがあり、コンビニコーヒーも身近な存在になっている。新たなコーヒーチェーンが入り込む隙間は、一見するとそれほど大きくないようにも思える。

 それでも両社が日本市場への進出を決めた背景には、成熟した市場だからこそ見いだした“スペース”があった。
■日本進出は「イタリアにパスタを売りに行く」ようなもの

 MASS COFFEEは、日本のコーヒー市場について「規模は大きいものの、成長率は低い」と分析する。成長性を期待して進出したわけではないという。

 「完成された市場の中で、まだ空いている一席を見てきました」

 同社は、日本のコーヒー文化を、喫茶店、カフェチェーン、スペシャルティコーヒーという3つの「波」で捉えている。

 その先の「第4の波」と位置づけるのが、「大きなカップを手頃な価格で、速く正確に提供し、1日に2回飲めるコーヒー」だ。
 日本進出にあたっては、周囲から「イタリアにパスタを売りに行くのか」とも言われたそうだ。それでも同社は、最も厳しい市場で認められれば、ほかの市場でも通用するとの判断から進出に踏み切った。

 Paik's DABANGも、日本を成熟市場とみる一方、「十分な容量」「リーズナブルな価格」「高い品質」「スピーディーなサービス」を、日本人の利用スタイルに合わせて提供する余地があると考えた。

 狙っている利用シーンは、出勤途中や仕事の合間などに、十分な量と品質のドリンクを気軽に購入する形だ。既存ブランドと同じ土俵で競うのではなく、日本のコーヒー市場に新たな選択肢を加えようとしている。
 では、なぜ日本進出の最初の場所に「新橋」を選んだのか。

 韓国発のブランドが日本に進出すると聞けば、都内であれば若者が集まる原宿や、韓国料理店やショップが立ち並ぶ新大久保などを思い浮かべる人もいるだろう。

 しかし、MASS COFFEEとPaik's DABANGが選んだのは、いずれも多くのビジネスパーソンが行き交う「新橋」だった。

■主要ターゲット層は「20〜40代の会社員」

 MASS COFFEEは日本初出店にあたり、最初から流行の街への出店は考えていなかったという。まず確かめたかったのは、実際にコーヒーをよく飲む人が集まる場所で、「価格・品質・大容量」という強みが日本でも通用するのかということだった。
 念頭にあったのは、周辺のオフィスで働く人たちによる「出勤途中に一杯、昼食後にもう一杯」という日常使いだ。「その2回をMASS COFFEEのカップで満たしたい」としている。

 Paik's DABANGも同様に、単に人通りの多い場所ではなく、「同じ客が日常的に繰り返し利用する場所」で、自社の強みが受け入れられるかを確認することを重視した。

 現在の主要ターゲット層は20〜40代の会社員。出勤前、ランチタイム、午後の仕事中と、時間帯ごとの利用やリピートの動向を見ながら、日本での店舗モデルを探っている。
 実際の反応はどうなのだろうか。

 Paik's DABANG新橋店では、朝の時間帯と昼過ぎにビジネスパーソンの利用が目立つそうだ。

 MASS COFFEEでは、予想外の反応があった。日本進出前は、日本人は韓国人よりも小さいサイズを選ぶとみていたが、新橋店では1リットルサイズの注文が予想以上に多い。

 サイズだけではない。韓国ではアメリカーノが中心だが、新橋店では10杯のうち7杯をエスプレッソ系のドリンクが占める。
 客層にも意外な傾向があった。当初は「忙しい会社員」の利用を多く見込んでいたが、実際には若い女性客も多かった。

■忙しい時間帯でもスムーズに利用できる仕組み

 そして、“大容量・低価格”と並んで両社が重視しているのが、「提供までのスピード」だ。

 取材時に印象に残ったのが、商品を受け取る瞬間だった。商品が完成すると、受け取りカウンターの天板に注文番号と商品名がデジタル表示される。

 両店ではモバイルオーダーにも対応するなど、忙しい時間帯でもスムーズに利用できる仕組みが取り入れられている。
 筆者が取材で両店を訪れた際も客足は途切れず、カウンターには完成したドリンクが次々と並んでいた。男女を問わずビジネスパーソンの姿が多く見られたほか、店内では商品や注文番号などのデジタル表示を写真に収める若い女性もいた。

 では、このスタイルは、日本でも一時的な話題にとどまらず、日常の選択肢として定着していくのだろうか。

 Paik's DABANGは新橋と神田を足がかりに、東京都内へ段階的に出店し、将来的には大阪など主要都市への展開も検討する。商品も日本向けに調整。ミルク系ドリンクを強化したほか、コーヒー豆のブレンドや一部メニューも見直した。
 さらに、日本専用のアプリも開発。モバイルオーダーやスタンプ、クーポンといった機能を備え、利用時間帯やメニューの好み、リピート率などの消費行動を把握し、今後の商品開発や店舗運営、マーケティングにも生かしていく考えだ。

 MASS COFFEEも、まず新橋店を安定させたうえで、虎ノ門、有楽町、日本橋など都心のオフィス街への出店を見据えている。その後、池袋や原宿、渋谷など若者が集まるエリア、さらに住宅地へと段階的に広げていく構想だ。
 その先には、日本限定のメニューを開発し、それを韓国へ“逆輸入”する夢もある。

 「韓国のお客さんが『これ、日本から来たんだって』と言ってくれる日が来れば」

■カフェインを控えたい人向けに「デカフェ」も用意

 一方、大容量だからこそ気になるのが、カフェインの摂取量だ。厚生労働省も、カフェインの過剰摂取によって不眠や心拍数の増加などが起こる可能性があるとして注意を呼びかけている。

 両店ではカフェインを控えたい人向けにデカフェの商品も用意されており、自分に合った飲み方を選ぶことも大切だろう。
 韓国で支持された“大容量・低価格”が日本で定着するためには、価格や量だけでなく、日本人の生活スタイルにどこまで溶け込めるかがカギになる。

 新橋で見かけた“大きな一杯”は、日本のコーヒー文化に新たな選択肢として加わるのか。まずはビジネス街から、その答えが見えてきそうだ。
西嶋 広美 :フリーライター/翻訳者(韓国語)
最終更新:
東洋経済オンライン
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