ロボットが記憶を検索して行動、韓国のSceneQueryPlannerが成功率を最大24ポイント改善 – 財経新聞

2026年10月28日 12:05
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(Pexels/Pavel Danilyuk)
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韓国電子通信研究院(ETRI)と光州科学技術院(GIST)が、周囲の情報を記憶し、必要な内容を自ら検索して行動を計画するロボット向けAI「SceneQueryPlanner」を開発した。韓国の通信社News1によると、ETRIが2026年10月26日に発表した。
研究チームによるシミュレーション評価では、同じ大規模言語モデル(LLM)を使ったReActとの比較で、タスク成功率が最大24.0ポイント向上した。観測した情報の保存方法と、計画の途中で必要な情報を取り出す仕組みに特徴がある。

■ロボットの行動計画を支える記憶

LLMを使うロボットは、自然言語の指示を分解し、移動や物体操作を組み合わせて作業を進める。家庭内で「ガラス製のカップだけを運ぶ」「電源が入っている機器を切る」といった指示に従うには、物体の名前に加え、材質、状態、位置関係を把握する必要がある。
研究チームは、観測結果をテキストで受け取る方式や、記憶した環境情報をまとめてプロンプトに入れる方式の課題を指摘している。情報が増えると必要な属性が埋もれやすく、属性が観測文に含まれない場合には、モデルが一般知識を基に誤った推測をすることがある。
特定の部屋にある物体の材質や現在の状態は、その環境から取得する情報だ。SceneQueryPlannerは、こうした情報を構造化して保存し、推論の途中で確認できるようにすることで、観測と行動計画をつなぐ。

■3Dシーングラフを能動的に検索

SceneQueryPlannerは、観測した部屋、家具、物体を「3Dシーングラフ」として管理する。空間や物体を表すノードに材質や開閉状態、電源状態などの属性を持たせ、ノード間の関係として包含、近接、物体が何かの上にあるといった情報を記録する。
新しい観測を得ると、物体の属性や関係を更新する。視野から外れた物体の情報も記憶に保持するため、別の場所へ移動した後でも、先ほど確認した物体の情報を検索できる。
行動計画では、推論、環境への働きかけ、記憶への問い合わせを組み合わせる。「Environment Grounding」は移動や操作を通じて環境を確認する過程で、「Memory Grounding」は保存したグラフから現在の作業に必要な属性や関係を選んで取得する過程だ。
例えば、テーブル上のカップを材質別に仕分ける場合、候補となるカップを見つけ、それぞれの材質を記憶に問い合わせてから運搬先を決める。何を実行するかとともに、その判断に必要な情報をどの順序で確認するかも計画に組み込む。
この仕組みは、外部の知識源から関連情報を検索して生成に利用するRAG(検索拡張生成)と、情報処理の構造に共通点がある。Patrick Lewis氏らがNeurIPS 2020で発表したRAGは文書を検索対象としたが、ここでは環境の記憶を表すグラフへの問い合わせが、判断に必要な情報を取り出す役割を担う。

■属性重視の評価で最大24.0ポイント改善

研究チームは、複数の部屋を移動しながら一連の家事を実行する能力を測る「AttPlan-Bench」を構築した。基本タスク群のAttPlan-Baseと、材質や状態、位置関係などで対象を指定するAttPlan-Attrからなり、運搬、加熱、清掃、機器操作などを扱う。
比較対象の一つは、推論と行動を交互に生成するReActだ。プリンストン大学とGoogle ResearchのShunyu Yao氏らがICLR 2023で発表した手法で、今回の実験では外部記憶を持たず、テキストの観測結果を使う構成とした。研究チームは、シーングラフを利用するSayPlan、MoMa-LLMとも比較した。
論文の評価表によると、AttPlan-AttrでMetaのLlama 3.1 70Bを使った場合、タスク成功率はReActの46.8%に対し、SceneQueryPlannerは69.6%となり、22.8ポイント上昇した。AlibabaのQwen 2.5 72Bでは44.0%から68.0%へ、24.0ポイント改善した。
OpenAIのGPT-4oでも、AttPlan-Attrの成功率は54.0%から71.2%となり、17.2ポイント向上した。GPT-4oを使った比較では、AttPlan-Baseと、別の家庭内作業ベンチマークWAH-NLでもReActを上回った。
主要な比較実験では、同じ基盤モデルを使って計画方式を比較している。小規模モデルを含む複数の構成で改善が見られたことは、モデルの選択に加え、必要な属性を保存・検索する設計がタスク遂行に役立つことを示している。

■広がるロボットの空間記憶研究

ロボットが過去の観測をどう利用するかは、他の研究チームも取り組む課題だ。ジョージア工科大学が2026年9月に紹介した研究では、視覚言語モデルの記憶能力を評価するベンチマークをECCV 2026で発表した。同大学によると、高難度タスクで最良のモデルの成功率は約50%だった。
スタンフォード大学の研究チームが同年9月に公表した「MessyMem」は、移動しながら物体を操作するロボットが、操作を通じて得た知識や画像を継続的に記憶する仕組みだ。研究チームによると、3時間超にわたる25タスクの連続シミュレーションで、目標の達成度を表すタスク進行率は80.0%となった。
MessyMemの結果は、構成要素を一部取り除いた最良の比較構成を14.8ポイント、外部の既存手法で最良の比較対象を28.9ポイント上回った。同研究では実機での評価も実施しており、タスクを通じて蓄積した知識を後の作業で再利用する研究が進んでいる。
ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所などの「EmbodiedRAG」は、作業に関係する部分だけを3Dシーングラフから検索する手法だ。研究チームは、家庭内タスクのシミュレーションで入力トークン数を約10分の1に減らし、計画の1ステップ当たりの平均時間を最大70%短縮したと報告している。
これらの研究に通じるのは、蓄積した情報から、その時点の判断に必要な部分を取り出す発想である。SceneQueryPlannerは、属性や関係への問い合わせ自体を計画上の行動として扱い、情報の確認と作業の実行を一つのループに組み込んでいる。

■フィジカルAIを重視するETRI

ETRIは、現実の環境を認識し、判断して行動するフィジカルAIを重点分野に掲げている。韓国の電子新聞によると、朴世雄(パク・セウン)院長は2026年5月28日の創立50周年フォーラムで、フィジカルAIとロボット産業の技術基盤づくりに取り組む方針を示した。
ETRIは9月1日の公式発表でも、フィジカルAIを五つの重点研究分野の一つに位置付けた。韓国の放送局MTNによると、朴院長は9月の記者懇談会で、特定分野のロボットを学習させるAI技術に注力する考えを説明した。環境情報を認識、記憶し、行動へ結び付ける今回の研究も、こうしたロボット知能の開発に関わる。
論文の謝辞によると、研究は韓国の科学技術情報通信部(MSIT)の資金による情報通信企画評価院(IITP)、国家科学技術研究会(NST)、韓国研究財団(NRF)の助成を受けた。

■実生活で使えるロボットへ

SceneQueryPlannerの公表された評価はシミュレーションで実施された。韓国の電子新聞によると、研究成果は2026年10月25日にFindings of EMNLP 2026で発表された。研究チームはソースコードとAttPlan-Benchを公開し、他の研究者が評価や後続研究に利用できるようにしている。
今後は、カメラやセンサーから得られる不完全な情報を使い、実機で環境の記憶を構築・更新する技術へ展開する方針だ。論文では、物体検出や属性推定の精度が判断に影響することを課題に挙げ、シミュレーション上で観測情報にノイズを加えた評価も行っている。
電子新聞が伝えたETRIのソーシャルロボティクス研究室のチェ・ジェウ氏は、USTの人工知能分野の助教授も務める。同氏は、実際の生活環境でもロボットが自らの経験と記憶を確認し、安定して行動できるよう技術を高度化する方針を述べた。
e4dsが伝えたGISTのキム・ウィファン氏の説明では、研究の意義は、3Dシーングラフを単なる保存場所から、エージェントが必要な情報を自ら問い合わせて取り出す能動的な記憶へ発展させた点にある。
元記事: South Korean Researchers: Robot Memory Architecture, Not Better LLMs, Lifts Task Success 24 Points
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
Tech Times
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