「エールプライス」の真意 – amusement-japan.co.jp


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INTERVIEW
SANKYO
小倉敏男 代表取締役社長

1月5日にSANKYOが発表した新価格方針「エールプライス」は、新春の業界に大きな驚きをもたらした。遊技機価格の高額化という課題にメーカーとして正面から取り組んだ施策はどんな思いから生まれたのか。小倉敏男社長に真意を聞いた。(文中敬称略)

発表された「エールプライス」の概要はこうだ。2026年度よりSANKYOブランドの主力パチンコ新機種(新規IP機種を含む)の本体販売価格を49万9000円(税抜/予定)に設定。さらに2026年秋に市場投入予定の新たな羽根モノ機では、新プロジェクト「KUGITAMA(クギタマ)」の一環として、月額2万円(税抜/予定)の低価格レンタル「KUGITAMA YELL(エール)プラン」としてスタートするというものだ。(以下、小倉社長との一問一答)

新価格政策に込めた思い

──「エールプライス」とは、どんな考え方から生まれた価格方針ですか?
小倉 当社の主力ラインナップを、可能な限り手の届きやすい価格で提供していく――。その方針を象徴する言葉が「エールプライス」です。遊技機業界に育てていただいたSANKYOの歴史への感謝と、これからも業界とともに成長していくという覚悟を、この価格政策に込めました。単なる値下げではなく、ホール様の経営を支え、ファンの遊びやすさにもつなげる業界へのエールとしてのプライス、という意味合いです。

──こうした価格政策はどんな考えから導き出されたのですか?
小倉 ここ数年、遊技業界が直面している課題は「ファンの減少」です。ファンが減ることでホール様の売上が下がり、その結果として新台購入台数も減少する。この負の連鎖が続いています。
その結果、開発に投じられる予算が絞られ、既存タイトルのスペック違いや、焼き直し的な後発機が増える傾向にあります。そうなると、ファンを「おっ!」と驚かせる、まったく新しい体験を生み出すことがますます難しくなり、遊技機の魅力低下によってさらにファンが減少しかねない状況になっていると思います。

──そういう状況を招かないことがメーカーに求められるということですか?
小倉 メーカーの使命とは、ファンを増やす体験をホール様とともに創り出すこと。その結果としてファン人口の底上げを図ること。それこそがメーカーが果たすべき最大の使命だと考えています。ホール様と協力しながら多くのファン、さらに潜在的なファンに新しい遊技体験を届けていく。ファンの減少に歯止めをかけ、新たなファンを呼び込めなければ、業界の未来はありませんから。

──その中で、他メーカーとSANKYOのスタンスの違いはどこにありますか?
小倉 もちろん他社批判をするつもりはありませんが、現状として大型IPの焼き直しやスペック違いに偏りがちになっているタイトルも見受けられます。SANKYOとしては新しいIPの開拓や、既存IPであってもこれまでと異なるスペックやゲーム性へのチャレンジを続けています。「いまあるパイを取り合う」のではなく、「新しい楽しさでファンそのものを増やす」という発想を大事にしています。

創意工夫でホールに還元

──パチンコ機の販売価格が高くなったのは、具体的にどんな背景があるのでしょうか。
小倉 コロナ禍による生産・物流の混乱、半導体をはじめとした電子部品の逼迫や価格高騰、長寿命化やクオリティ向上に伴う設計・部材の高度化などの外部要因も重なり、製造原価そのものが大きくなり、パチンコ台の販売価格は高騰を続けました。しかしこうした内部的な事情は一般にはなかなか伝わりません。「メーカーが勝手に高くしている」という誤解を招いている側面もあったと感じています。「昔より高くなった」のは事実ですが、単純にメーカーの利益追求だけで生じたものではなく、社会・産業全体の構造的な変化の中でやむを得ない部分が大きいという点を、あらためてお伝えしたいと思っています。

──「昔は機械が安かった」という声に対してはどう答えますか?
小倉 例えば、自動車もかつては機械式の制御が中心で、いまほど電子制御も高度な安全装備もありませんでした。それがいまでは電子制御技術が進化し、安全性・快適性・環境性能が飛躍的に向上。その分価格も上がっています。遊技機も同様で、かつては機械主体のシンプルな構造でしたが、今では映像表現が重視され、高品質の液晶パネルや多彩な演出を実現する電子制御が当たり前になりました。したがって、遊技機も昔の価格帯にそのまま戻すのは現実的ではありません。

──では、コスト管理ではどんな工夫をしていますか?
小倉 当社としては現在の技術水準でどこまでコストを削れるか、どこまで価格を抑えられるかに真正面から取り組んでいます。私は商品本部で6年間、コスト削減に携わってきましたが、設計段階からのコストダウンを意識した技術開発、社内体制の見直しによる開発・生産プロセスの効率化、部材の共通化・調達力強化を含むサプライチェーン全体の再構築、これらの取り組みを総動員して、高品質を維持しながら少しでも低価格化することにチャレンジしてきました。すべてを昔に巻き戻すことはできませんが、その中でも創意工夫でどこまでホール様に還元できるか。そこがメーカーの力量だと考えています。

──ファンを増やすためにこれから特に力を入れていくポイントを教えてください。
小倉 大きく分けると次の3点です。まずは新鮮でワクワクするコンテンツ・スペックへの挑戦。次にホール様の新機種導入のハードルを下げるための「エールプライス」の展開。最後に 「昔の良さ」を見直す取り組みと、現代の技術の両立です。とくに3点目については、「KUGITAMA」プロジェクトで、かつての遊びの良さ・わかりやすさを現代的なかたちで蘇らせる試みを並行して進めています。懐かしさと新しさの両方を提案しながら、「もう一度やってみたい」「初めてだけど楽しそう」と思えるきっかけを増やしていきたいですね。

──最後に、業界関係者に伝えたいメッセージをお願いします。
小倉 ファンの減少もコスト高騰も、一社だけでは解決できない大きな課題です。その中でもメーカーには、「新しい体験でファンを増やす」「導入しやすい価格でホール様を支える」という使命があると考えています。正直に申し上げると、当社だけが遊技機の価格を下げても、市場全体がすぐに変わるとは思っていません。だからこそ「エールプライス」をその最初の一歩にしたい。「SANKYOがこういうことを始めたなら、うちも何か新しいチャレンジをしてみよう」「業界全体で、新規ファンの入口をもう一度つくり直していこう」と感じていただけるポジティブな連鎖が、少しずつでも広がればと願っています。「楽しさ」と「導入しやすさ」を両立した機械を送り出し続けることで、業界全体の活性化に貢献していきます。

※月刊アミューズメントジャパン2026年2月号に掲載した記事を転載しました。
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