
川村 力[専門編集委員/ニュースレター「Cutting Edge」エディトリアルリード]
有料会員向けニュースレター「Cutting Edge(カッティングエッジ)」からの一部転載です。
こんにちは!ビジネスインサイダーが毎日お届けするニュースレター「Cutting Edge(カッティングエッジ)」エディトリアルリードの川村です。
週末まではS&P500種株価指数、ナスダック(NASDAQ)総合株価指数ともに最高値を更新し、シューズメーカーがAIクラウドプロバイダーへの事業転換を発表して株価が900%弱の爆騰を記録したニュースを取り上げる余裕があったのですが、残念です。
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そう、またこの話をしなくてはなりません。ホルムズ海峡が再び封鎖されました。
イランのアラグチ外相は4月17日金曜日に「停戦(の残り)期間中、全ての商船に対して、ホルムズ海峡の通航が完全に開放される」とX投稿し、実際に翌18日には20隻超の船舶が通過したため、戦争終結に向けた協議の加速への期待も高まりましたが、そうは問屋が卸しませんでした。
同日、インド船籍の船舶がイランから銃撃を受けるなど「完全に開放」が実現されていないことが早くも可視化され、イランの革命防衛隊も再び海峡を管理下に置いて封鎖する方針を表明。
それに対し、19日には米海軍がイラン船籍の貨物船を砲撃の上で拿捕(だほ)したとトランプ米大統領が発表するに至り、問題は振り出しに戻りかけています。
本日はエグゼクティブエディターのジョー・チョッリがトップストーリーを担当。市場の最新の状況と見通しを整理します。
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先週はまさに歴史的な1週間でした。
株式市場の主要指数はイラン戦争開戦前の水準を回復しただけでなく、あっさりと最高値を塗り替え、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物価格は2週連続で10%以上の下落を記録しました。
このように劇的な体験をした後は、チャートを使って目に見える形で振り返るのが非常に有用です。先行きを指し示す何らかのシグナルを発見するなど、思わぬ副産物を得られる可能性もあります。
以下では、先週の市場の動きをチャート化しつつ、それが示唆するポイントを整理しました。
ナスダック総合株価指数は1992年1月以来となる13営業日連騰を記録。歴史的に見ても相当に勢いのある上昇相場を示す数字です。
主要な株価指数はいずれも史上最高値を更新しましたが、その勢いをけん引したのはテクノロジー株。投資家はグロース(高成長)株、とりわけAI関連銘柄に資金を戻す気満々ということでしょう。
ホルムズ海峡の通航再開(足元では再封鎖の可能性アリですが)による追い風を受ける前から上昇相場は始まっていたので、目の前の問題が解決されれば、投資家の関心は来たるべき決算発表シーズン、市場全体の収益成長を示すシグナルへと移ると思われます。
3月末のイラン戦争開戦を追い風に急上昇したエネルギー株は、その後市場全体が回復に向かう動きとほぼ完全に逆行。米イランの停戦協議の進展に伴う原油価格の変動を追いかけるような値動きが続き、開戦前の水準まで下落しました。
ただし、原油価格はいまだに開戦前の水準を25%前後上回ったままです。史上に残る今回の混乱の規模を踏まえたとき、このまま安定局面に移行する保証はどこにもありません。原油価格が再び上昇に転じた場合、売り込まれたエネルギー株も持ち直すでしょう。
ソフトウェア株は直近の底値から回復の兆しを見せており、その復調ぶりには目を見張るものがあります。
急激に進化するAIツールによる業務改革の格好の標的と認定されたソフトウェア業界の株価は、いわゆる「終末論」が喧伝され始める直前(1月末から2月上旬)の水準を回復しました。
とは言え、昨年秋につけた高値との間にはまだ大きな開きがあり、投資家は以前からの懸念を忘れたわけではなさそうです。イラン戦争のひとまずの緊張緩和を受けてAI関連銘柄の株価上昇が再加速したいま、最も脆弱とされるソフトウェア業界にとっては逆風となる恐れがあります。
原油価格高騰に起因するインフレ圧力がひとまず後退し、利下げが再び議論されるようになったため、ドル指数は下落して数年ぶりの安値水準に迫っています。
ドル安は立場によって恩恵にも逆風にもなり得ます。米国の輸出企業にとっては収益の押し上げ要因になる一方、海外旅行に出かける一般市民にとっては購買力の低下を意味します(ドル円相場に関しては、159円前後で大きな変化なし)。
なお、米国とイランの停戦は4月22日夕刻(日本時間23日朝)が期限。和平協議の開催は未定。トランプ大統領はブルームバーグの取材に対し、再延長の可能性は「極めて低い」と答え、合意成立までホルムズ海峡を開放しない方針を明らかにしており、上記四つの展開が全て想定外の方向に流れる可能性もゼロとは言えません。
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かつてドットコムバブルの寵児と呼ばれた半導体大手インテル(Intel)が当時の株価水準をほぼ回復しました。
2021年2月に就任したパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)の指揮下で、米国防総省から100億ドルを超える巨額の補助金を獲得し、製造工場の新設に乗り出すなど経営再建を進めたものの、生成AI普及拡大の波に乗り遅れて好機を逸した打撃が大きく、2024年12月に電撃辞任という結果に。
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ゲルシンガー氏の在任期間中に6割以上下落した株価の回復を託された後任のリップブー・タン氏も、昨年8月にトランプ大統領から「重大な利益相反」を理由に辞任を求められるなど、思うように経営再建を進められない状況が続いていましたが、イラン戦争の緊張緩和が同社にとっても転換点になりました。
インテルの株価は3月31日を底値に反転し、4月20日終値までに59.5%と驚異的な上昇を記録。ドットコムバブルの最中、2000年8月につけた過去最高値を更新するまであと一歩に迫っています。
同社は4月7日、イーロン・マスク氏率いる宇宙開発大手スペース(Space)Xと電気自動車大手テスラ(Tesla)が進める巨大半導体工場「テラファブ(Terafab)」構想に参画することを発表。
4月9日にはグーグル(Google)との複数年にわたる協業も発表。従来からグーグルがクラウド事業で活用してきた「Intel Xeon」CPU(中央処理ユニット)を複数世代にわたって継続採用するとともに、カスタムASICベースのIPU(インフラ処理ユニット)の共同開発を加速させることを明らかにしました。
インテルの株価は上昇モメンタムを維持しているものの、投資家たちは同社がアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のような大手競合からシェアを奪取する展開を期待しています。
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インテルと同じくドットコムバブルの寵児と位置づけられ、かつて世界最大の時価総額を誇ったネットワーク機器大手シスコ・システムズ(Cisco Systems)は昨年秋に過去最高値を更新。
一方、インテルの直近高値は4月18日の69.2ドル、過去最高値は2000年8月の75.8ドル。記録更新のシャンパンを開けるには、さらに9.5%の上昇が必要です。
ビジネスインサイダー米国編集部は、このニュースレターの配信開始以前から、5銘柄で構成する均等加重(全ての銘柄を同一割合で保有する)バスケット「ファースト・トレード・インデックス」を運用しています。
読者から寄せられたご意見を参考に、毎週必ず一つ銘柄を除外し、新たな銘柄を加えるリバランス(調整)を行うルールです。
現在のポートフォリオはイーベイ(eBay)、アルファベット(Alphabet)、エヌビディア(Nvidia)、デルタ航空(Delta Air Lines)、JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)という顔ぶれになっています。
さて、読者の皆さま、かつてない朗報です!先週はファースト・トレード・インデックスが驚くべきパフォーマンスを見せました。
最も力強いけん引役になったのは、9.7%上昇のイーベイと7.7%上昇のアルファベット。6.9%上昇のエヌビディア、5.8%上昇のデルタ航空も役割を果たしました。
決算発表を起爆剤とする株価上昇に期待して先週新たに組み入れたJPモルガンはわずか0.1%の上昇にとどまり、結果としてポートフォリオの足を引っ張る結果に。とは言え、決算発表直後の2日間は2.5%下落と苦しんだことを思えば、上出来かもしれません。
ファースト・トレード・インデックスの上昇幅はトータル6%で、イラン戦争前の水準を回復して勢いづくS&P500種株価指数の4.5%上昇をアウトパフォームすることに成功しました。
この力強い流れを何とか維持するため、明日の選択は思案のしどころです。
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何らかのAIツールを試している人々を紹介したり、時にはビジネスインサイダーのテックアンカー(分野責任者)を担うアリステア・バー記者自身が試用してみたりする連載企画です。
取り上げるべきツールをご存知の方は、編集部の川村までメール下さい。
さて、「Lunches.fyi(ランチーズ・ドット・エフワイアイ)」をご存知の方はあまりおられないと思いますが、テック企業を時価総額ではなく社内カフェテリアのクオリティでランキングするAIプロジェクトです。
ソーシャルメディアを主戦場にさまざまな興味深いプロジェクトを展開するソフトウェアエンジニアで、数カ月前にオープン(Open)AIにジョインしたライリー・ウォルツ氏が立ち上げました。
オープンAIのコーディングエージェント「Codex」に音声入力でプロンプトを入力し、約1時間で完成させたそうです。本人談によれば、以前なら20時間以上かかっていたタスクだとか。
機能としては、ソーシャルメディアなどネット上に公開されているテック企業のカフェテリアのメニューをスクレイピング(データ収集)し、AIを使ってカテゴリー分け、採点するもの。
ローンチ当初のランキングでは意外なことにエヌビディア(Nvidia)が首位でした。世界最大の時価総額に負けず劣らずの充実ぶりで、トリュフマッシュルームピザからグリーンサラダまで多彩なメニューを提供していることが判明しています。
ただ、この実験はもともと知られていた事実をあらためて浮き彫りにしました。それは「AIは学習するデータ以上の存在になり得ない」ということです。
自然言語によるオンライン統合開発環境(IDE)を運営するリプリット(Replit)のアムジャド・マサド最高経営責任者(CEO)が、自社カフェテリアの「タンパク質」カテゴリーにおける評価の低さを疑問視する意見をX投稿したことで、バグが発覚しました。
要するに、リプリットの(スクレイピングを通じて得られた)メニューの一部について、栄養素に関するデータが欠落していたために、データの存在するメニューまで含めてタンパク質が全てゼロと誤処理されていたのです。
開発者のウォルツ氏は「タンパク質の数値、誤解を招く形になってすみません!たったいま修正しました。(中略)これもバイブコーディングの面白さですね」と返答しています。
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