トップ大学と2階層で格差拡大、NISTEP総合的意識調査が明らかにしたこと – ニュースイッチ by 日刊工業新聞社


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文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の総合的意識調査で、競争的資金などの研究環境への充足感が、トップ大学と第2階層の大学で格差が広がっていることが分かった。2021―25年度の第6期基本計画の5年間は予算を増やし、格差是正へと政策を打ってきた。それでも現場の研究者たちには届いていない可能性がある。背景には急激な物価高騰がある。物価変動に応じた予算配分が求められる。(編集委員・小寺貴之)
NISTEP調査は研究者に研究環境や大学経営などの充足感を聞いて基本計画期間の政策効果を追跡している。直近の第6期は大きく予算が増えた。科学技術関係予算は16―20年度の第5期が28兆3708億円。第6期は43兆6260億円と1・5倍になった。
それでも研究者は環境が悪くなったと評価する。特に第2階層が低下した。第2階層は論文数シェアで5―18位の大学で、この1年で調査57問中23問の評価が悪化している。反対に論文数シェア1―4位のトップ大学では57問中26問が改善し、対照的だ。
NISTEP調査には「最低限学生の卒業研究をサポートできる金額を研究室に渡すべき。卒業研究が競争的研究資金に支えられている現状はおかしい」(重点プログラム研究者)、「競争的資金を取らなくては卒業研究どころか学生実習すらまともにできない」(第2階層大学)などと悲鳴のような声が寄せられている。研究者が学外から予算を獲得しないとまともな研究教育ができないのであれば、教育機関として本来の役割を果たせない。縮小均衡に耐えてきたが、急速な物価高で底が抜けた形だ。
例えば診断用・研究用試薬類の輸入単価は20年度に比べて25年度は1・8倍、培養用培地は1・3倍に上昇した。科研費などの金額は変わらないため「物価上昇で実質半減している。これまでと同じレベルの研究を維持するのは不可能」(第2階層大学)という。
文部科学省は選択と集中の副作用が現れているとの批判を受け、格差を緩和する政策を打ってきた。例えばトップ大学を支援する国際卓越研究大学制度だけでなく、第2層向けの「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」(J―PEAKS)が進行中だ。NISTEPの村上昭義主任研究官は「J―PEAKSの採択大学は踏みとどまった」と説明する。第2階層14大学の半数に当たる採択大学は横ばいだった。
言い換えると第2階層であっても政策で選ばれない大学は研究環境が悪化している。この第2階層の厚みがトップ層の高さを決める。伊神正貫センター長は「本来はもっと分厚い層を作る必要がある」と指摘する。
予算は増やし、政策も走らせた。それでも研究環境は改善しない。第2階層が崩れたらトップ層を含めて再興が困難になる。物価高への対応だけでなく、政策理念や予算配分構造など、根本を見直す必要がある。
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