
DX、生成AI、Web3――。ビジネスの世界では次々と新しい経営バズワードが登場し、多くの企業がその波に乗ろうとする。しかし、成功企業の手法をそのまままねしても、同じ成果が得られるとは限らない。実際、アドビの成功をきっかけに注目を集めたサブスクモデルも、多くの企業が参入した一方で撤退を余儀なくされたケースは少なくない。なぜ同じ戦略でも結果に差が生まれるのか。※本稿は、著作家の山口 周『コンテキスト・リーダーシップ「最高の上司」と「最悪の上司」は文脈で決まる』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
一橋大学で競争戦略論を教えておられる楠木建先生は、時代ごとに流行する経営コンセプトに飛びついて右往左往する様を「飛び道具トラップ」という用語で絶妙に表現されていますが、この現象は、コンテキストという補助線を当てて考察することで、より理解が深まります。
経営の世界では、常に、その時代において流行する経営バズワードが存在します。
1990年代にはBPRやSCM、2000年代にはERPやCRM、2010年代にはIoTやサブスク、2020年代にはウェブ3やDX、そして現在は生成AIといった経営バズワードが存在しました。しかし、自社のコンテキストを踏まえず、安易にこれらの経営流行コンセプトに飛びつけば、悲惨な結果になるのは火を見るより明らかです。
例えば、近年「サブスク(サブスクリプション)」という飛び道具トラップがブームになりました。きっかけの一つは、アドビが自社のPhotoshopやIllustratorといった高額なソフトウェアを、買い切りではなく定額制に切り替え、安定収益と顧客接点を確保することに成功した事例です。