中国の消費市場では近年、「チタンブーム」が静かに広がっている。チタン合金製の眼鏡フレームや3C製品(コンピューター、通信機器、家電・電子機器)をはじめ、チタン製のカップ、鍋、自転車などの日用品まで、軽量で耐食性に優れたチタン製品が消費者の新たな選択肢となっている。新華社が伝えた。
宝鶏チタン業股份有限公司板材工場の張瑜副工場長は、「以前、チタンは一般の人々の生活にはあまり身近な存在ではなく、高級素材で生産量が少なく、価格も高いというイメージだった。しかしここ数年、技術の進歩によってチタン材の生産量が大幅に増加し、価格も低下したことで、チタン製の日用品が増え、より多くの消費者が購入・利用できるようになった」とした。
「宇宙金属」と呼ばれるこの素材は、かつては航空宇宙や深海開発などの分野で主に使用されていた。中国国産大型旅客機C919、神舟シリーズ有人宇宙船、「奮闘者」号深海有人潜水船など、中国を代表する各種機体・機材に活用されてきたチタンが、今では一般家庭にも浸透しつつある。
中国はすでに世界最大のチタン生産国・消費国となっている。2023年から2025年にかけて、ECプラットフォーム「京東」におけるチタン製調理器具の取引額の複合年間成長率は109%に達し、急速な成長を見せている。
2025年1月7日、宝鶏市の永盛泰チタン業有限公司の機械加工工場で、高速コンプレッサー用チタン合金インペラー鍛造品を旋盤で加工する作業員(撮影・李一博)。
陝西省宝鶏市では世界のチタン材の約3分の1が生産されている。1960年代、国はここにレアメタル加工拠点を建設し、それが現在の宝鈦集団(BAOTIグループ)の前身となった。宝鶏チタン業股份有限公司板材工場は、宝鈦集団の主要生産拠点の一つだ。
張副工場長は、「スポンジチタンの製造から溶解、加工、精密加工までを一貫して行う生産ラインを整備したことで、中国は世界で4番目に完全なチタン工業体系を持つ国となった。60年にわたり宝鈦集団は製造技術を継続的に革新し、製品分野を拡大してきた結果、海外製完成品への依存度は大幅に低下した」と語った。
また、「設備の更新・改良を続け、年間5000トンだった板材生産能力を年間1万トンに引き上げた」という。
宝鈦集団は業界のリーディング企業として、宝鶏市に600社以上のチタン関連企業の集積を促進した。現在では宝鶏市は「中国のチタンバレー」と呼ばれる産業集積地となっている。
こうした発展により、チタン製造の効率と品質は大幅に向上し、最終製品の価格も大きく下がるとともに、製品ラインナップも豊富になった。現在、宝鈦集団は500種類以上のチタンおよびチタン合金製品を生産できるようになっており、高級素材だったチタンが一般消費者向け市場へ広がる基盤が築かれた。
宝鈦の事例は決して例外ではない。赤外線サーモグラフィー技術は、物体表面から放射される赤外線を捉えて可視画像へ変換する技術だ。かつては高性能装備にしか使われなかったこの画期的な技術も、現在では民生用途へ広がりつつある。ECサイトで検索すると、一般消費者向けのサーモグラフィーカメラは1000元(1元は約23.7円)台まで価格が下がり、アウトドア探検、健康管理、プライバシー保護、ペットケアなど複数の分野で活用されている。
2026年5月12日、竜門石窟研究院石窟保護研究・文化遺産モニタリングチームの劉睿氏が、極南洞で赤外線サーモグラフィーカメラを用いて漏水箇所を確認する様子(撮影・李嘉南)。
陝西省西安市に本社を置く中科立徳は、スマート光電システムを手掛ける企業だ。同社の劉偉董事長は、「以前、海外製の赤外線検出器は1台で1万元以上、非冷却型サーモグラフィーカメラ1台は40万元以上もした」と振り返る。
転機となったのは、中核部品技術の国産化だ。劉董事長によれば、大幅な価格低下の背景には、ハードウェア、光学技術、製造技術の総合的な進歩がある。ハードウェア面では、技術革新によって画像処理、対象認識、温度解析などの機能を1つのAI組み込みチップに集約し、機器全体の消費電力とコストを削減したほか、赤外線機器の性能も「見える」レベルから「鮮明に見え、識別でき、正確に測定できる」レベルへと向上させ、応用範囲を大きく広げた。
光学分野では、中科立徳は中国科学院西安光学精密機械研究所と共同でコンピュテーショナルイメージング技術を研究開発している。アルゴリズムと光学システムを協調設計することで、画質を維持しながらレンズ枚数を削減し、赤外線光学システムの小型化・軽量化・低コスト化を推進している。
現在、中科立徳は120件を超える独自の知的財産権を保有し、年間1万2000台の光電機器を生産できるフレキシブル生産拠点の建設を進めている。
劉董事長の目標は、赤外線技術とスマート光電技術の応用領域をさらに広げることだ。医療診断支援、自動運転、スマートシティ、低空経済(低空域飛行活動による経済形態)、商業宇宙開発、農産物検査など、より多くの民生・産業分野への展開を目指している。劉董事長は、「3~5年以内には、当社の技術がスマートフォンにも搭載されるかもしれない。その時にはスマートフォンは写真を撮るだけでなく、体温測定や暗視撮影、さらには果物の鮮度まで判定できるようになる可能性がある」とした。(編集KN)
「人民網日本語版」2026年7月3日