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高杉康成(たかすぎ・やすなり) コンセプト・シナジー代表。経営学修士(MBA)。中小企業診断士。日本屈指の高収益企業、キーエンスの新商品・新規事業企画担当を務めた。退職後、新規事業や新製品開発、ビジネスの付加価値向上などの分野において、大企業から中小企業まで幅広い業種・企業の指導に携わる 【関連画像】図:性善説と性弱説での「公平性」の扱いの違い 「先日の冬のボーナス、自分はかなり頑張ったのに全然評価してもらえなかった」 Aさんは友人との会食でこう漏らした。昨年12月に支給されたボーナスの金額が思ったよりも低かったため上司に確認したところ、自分の頑張りが全く評価されていないと分かった。 Aさんは機械を販売する商社に勤めている。入社4年目で任された販売エリアを1人で担当し、売り上げもしっかりと上げている。 Aさんは昨年、新規開拓に力を入れた。理由は2つ。1つは、昨期の年度方針で社長自身が打ち出した「新しいことへのチャレンジ」というメッセージに沿った活動をすべきと考えたからだ。もう1つは、自身の販売エリアで売り上げを伸ばすには、新規顧客の開拓が不可欠と感じたからだ。 今の販売エリアを担当して3年がたち、地域の全容がようやく見えてきた。主要取引先の3社は成長余地がそれほど大きくないため、大きな売り上げ拡大は見込めない。そして、開拓に成功したら大きな売り上げが見込める顧客が5社あると分かっている。しかし競合企業が食い込んでおり、入り込める可能性はほとんどない。歴代の担当者も挑んできたものの、まったく入れなかった。 しかしながら、この5社に入り込まないとこのエリアでのさらなる売り上げ拡大は望めない。だからこそ新規開拓に力を入れた。具体的には、5社それぞれの業務を細かく分析し、自社の機械がどこでどう役に立つかという「お役立ち資料」を毎月作成し、各社に通って渡してきた。 渡してきたと言っても、受付に渡しただけで担当者は分からない。会社が管理している名刺情報は古く、電話してもメールしても反応がない。相手にされていないのか、異動・退職などをして業務に携わっていないかのいずれかだ。 従って、効率が悪いと思いながらも、毎月各社に通って「お役に立てる資料を持ってきました」と言って渡してきたのだ。この5社は主要取引先3社から離れており移動効率も良くない。行くだけでも大変だ。 こういった活動を続けて半年が経過したある日、5社のうちの1社であるX社から連絡が入った。「この間受付に渡してもらった資料について、話を聞かせてくれないか」。相手はX社のC課長。地道な活動が実を結んだ喜びを感じながら面談に臨んだ。3カ月のやり取りを経て、少ない金額ながらX社からの受注を獲得した。自社にとって、創業以来初めてのX社からの受注だった。 話を聞いてみると、C課長は他の工場から異動してきたという。異動して分かったのは、今まで取引している企業は、取引内容も打ち合わせもマンネリ化しており、X社の役に立つ新提案をするわけでもなく、定期的に必要となる消耗品を提供するだけだった。人手不足が深刻で何とかしなければと感じていたC課長にとって、Aさんの提案は願ってもない内容だったという。 このように、Aさんの的確な提案と地道な努力を経て、見事X社に入り込めた。しかも社長が打ち出している「新しいことへのチャレンジ」にも合致している。会社方針に合致した活動を実践し、過去の先輩たちがなし得なかった快挙をなし遂げたのだ。 にもかかわらず、冒頭のようにまったく評価されなかったAさんは退職を考えた。頑張っても評価されないなら、この会社にいても自分は生きないかもしれない。そう感じて友人と会食したのだった。 実はAさんは、ボーナスの額面を知る前から、評価されない可能性が高いと考えていた。Aさんの会社は結果を重視するため、途中経過やプロセスはほとんど評価されない。商社の場合、売り上げは取引先の規模と業績に大きく左右されるため、購買力のある顧客を持っているかどうかで業績がほぼ決まる。つまり、どの会社を担当しているかで、給与、賞与、昇進昇格がほぼ決まってしまう。 Aさんが担当している主要3社だけでは、自身の給与、賞与アップや昇進昇格がおぼつかないと考えたからこそ、新規開拓を必死に頑張った。
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