〝おもてなし〟の質が激変!?宿泊業界でのAIエージェントの賢い活用法 – @DIME アットダイム


ビジネス領域で生成AI活用が促進される中、宿泊業界でも活用が進んでいる。
近年は、単機能生成AIのみならず、多様なタスクを自律的に行なう「AIエージェント」の進化発展も目覚ましく、宿泊業界でも活用が進められているようだ。
宿泊業といえば、日本が誇るおもてなし文化を支える重要な業界。AIエージェントはどんなことをサポートしてくれるのか。活用事例をもとに探ってみた。
日本の宿泊業界で今インバウンド対応が重要な課題のひとつとなっている。そこで、多言語対応したAIチャットボットで予約を受け付ける事例は多い。
また、予約時にAIが宿泊客のニーズを聞き入れ、おすすめをレコメンドするのも定番化している。
某有名旅館やホテル運営企業は、全施設の予約や問い合わせ対応をメールと電話で受け付けているが、オペレーターの負担は大きかった。
そこでAIエージェントをオペレーターのサポートツールとして導入。メール返信文の自動生成や新人教育ツールとして役立てているというわけだ。
10pct.株式会社は、データドリブンなホテル・旅館の運営支援や観光地開発を行なうスタートアップ企業。
ホテルや旅館にファイナンス・マーケティング・DX・業務改善などの本社機能を担うゴーストオペレーターを提供している。
代表取締役CEOの中堀友督氏は、以前星野リゾートに勤めていたが、同業界の業務の多くが属人化しており、IT化およびAI活用が遅れていると気づき、同社を創業したという。

中堀 友督氏
10pct.代表取締役 CEO。慶応義塾大学卒業後、星野リゾート初の試みとなる、新卒から投資部門に入社。その後、CapitaLand Japanの投資部門に入社し、2023年にアジアの観光ビジネスのポテンシャルに魅了され起業。
現在、同社はAIエージェントを、需要予測に基づく価格設定のダイナミックプライシングやシフト最適化などを目的に、施設ごとに固有のAIエージェントを短期間で開発・提供している。
「ダイナミックプライシングにおいては、AIが推奨する価格ランクの採用率が80%を超えています。
また、推奨理由が自然言語で表示されるほか、マネジメントに必要なデータが適切に可視化された状態で表示されるため、業務の時間効率の向上が確認されています」
「スタッフのシフト自動作成においては、現在2施設の8つのセクションで利用いただいています。
各セクションに存在する複雑なルールや時間ごとの必要人数を落とし込んだ最適化モデルを、LLM(大規模言語モデル)の力で構築しています。
LLMが先にドラフトを自動作成しており、すでに60~80%完成しているので、そこから会話しながら、数十人の1か月のシフトを組み上げていきます」
AIエージェントを導入することによる目標として、中堀氏は次のように語る。
「ホテルや旅館の業務の30~50%は、クレーム対応・手配・エージェント対応などのバックオフィス的なホワイトカラー業務です。
これらをAIで自動化することで人的リソースを〝おもてなし〟に集中させることが目標です。
大浴場の案内・食事時間などの〝情報のやりとり〟はAIに任せ、ホテルや旅館の歴史・ワインのおすすめなどの〝感情のやりとり〟を人が担う世界観を目指しています」
実際にとある宿泊施設では、AIエージェントによる自動化で得られたスタッフのリソースをおもてなしに充てることができたという。
「年末年始に試験的にBarを営業したところ、スタッフの接客にも変化が生まれました。
普段は館内案内や料理説明など、定型的なやり取りが中心になってしまうところ、Barでは仕事や趣味、旅行の目的など、お客様と業務を離れた会話をする機会が増えました。
スタッフからも『お客様と話すこと自体が楽しい』といった声があがり、接客の原点を改めて感じられる機会となりました。
またサービス内容だけでなく、自然な交流が生まれる〝場〟をつくることの重要性を深く理解することができました」
今後の展望について、中堀氏は次のように話す。
「現状は構想段階ですが、宿泊客からの問い合わせを、メール・電話ともにAIエージェントでサポート・代行する仕組みを作っています。
安易にAIが自動返信するのではなく、AIが回答案や電話中の情報提示サポートをするなど、スタッフの顧客対応のクオリティを落とさずに、極力、省力化する仕組みにしています。
技術一辺倒にならず、現場で違和感なく今日から使えるAIプロダクトの提供を目指しています」
現在は、顧客との会話をAIがリアルタイムに理解し、接客を裏側から支える仕組みを開発中だという。
「例えば、チェックイン時にお客様が名乗ると、AIが予約情報や過去の宿泊時のやりとりを、対応中のスタッフに即座に共有します。
お客様が『翌朝は6時に出たい』と話せば、AIが朝食会場や送迎の枠を押さえ、要望として自動で業務システムへ記録する。
このような世界観を実現するために、AIネイティブな業務基盤システムを構築しています。
スタッフが検索、入力、メモ、引き継ぎといった事務作業や情報伝達作業に追われず、目の前のお客様へのおもてなしに集中できるようになります。
AIが接客を置き換えるのではなく、〝人にしかできないホスピタリティや、感情に寄り添う仕事を支える構想〟です」
AIが高機能化するのにともない、従業員はさらに〝人間にしかできない役割〟に集中できるチャンスが増える。中堀氏が強調するおもてなしや感情のやりとりは、今後ホテル業界にとって重要なテーマとなるだろう。
取材・文/石原亜香利
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