
武田薬品のオベポレクストン(製品名オーゼイフル)が中国に次いで2026年8月に米国、日本でも承認された。ナルコレプシータイプ1の原因となる生物学的機序そのものに作用する、初めての薬であり同社のブロックバスター候補となっている。
FierceBiotechが取材した専門家たちによれば、この承認はゴールではなく神経科学のGLP競争の幕開けとしており、今後複数の企業が参入して開発競争がデッドヒートするとされる。
https://www.fiercebiotech.com/biotech/neuroscience-revolution-glp-race-keep-us-awake-and-make-billions-doing-it
https://www.fiercepharma.com/pharma/takeda-gains-fda-nod-first-class-narcolepsy-treatment-orzeyful
その背景としてはGLP-1が糖尿病から出発して肥満、心血管、腎臓、肝臓、睡眠時無呼吸へと適応を広げているように、オレキシン作動薬もナルコレプシーから出発して、他の睡眠障害、疲労、認知、気分へと広がりうることがある。
競合の開発状況を整理する。まず、2026年3月にはイーライリリーが睡眠障害に特化し、武田と同じく選択的OX2R作動薬であるcleminorexton を有するCentessa Pharmaceuticalsを63億ドルで買収した。アナリストによれば限られたデータに対してかなり高いプレミアムを支払っており、その評価額を正当化するだけのより大きな市場があると確信していたはずだと述べている。
続いてAlkermesは、選択的OX2R作動薬で充実したパイプラインを有しており、alixorexton、ALKS 7290、ALKS 4510がある。alixorexthonはナルコレプシータイプ2で第2相の良好な結果を公表し、両タイプのナルコレプシーと特発性過眠症で開発後期に入っている。ALKS 7290は注意欠陥・多動性障害(ADHD)での第1b相データが第3四半期に見込まれ、ALKS 4510はパーキンソン病や多発性硬化症といった神経変性疾患に伴う疲労で早期開発段階にある。
Harmony Biosciencesも、Best in Classの開発を狙っており、BP-205は現在健常人で試験中で、年内に睡眠不足の被験者を対象とした第1b相を開始し、2027年中頃に複数の中枢神経系適応で本格的な第2相プログラムを立ち上げる計画となっている。安全性プロファイル、迅速な吸収、1日1回投与の可能性が特徴となっている。
加えて、エーザイが2026年3月にナルコレプシーでE2086の第2相試験の組み入れを開始し、LundbeckのLu AH69593がFDAのファストトラック指定を受けている。
https://www.fiercebiotech.com/biotech/lilly-pays-63b-upfront-sleep-disorder-focused-centessa-latest-neuroscience-play
https://investor.alkermes.com/news-releases/news-release-details/alkermes-presents-detailed-positive-results-vibrance-2-phase-2
https://media-us.eisai.com/2026-03-26-EISAI-TO-BEGIN-ENROLLING-PHASE-2-STUDY-IN-PATIENTS-WITH-NARCOLEPSY
https://www.lundbeck.com/us/newsroom/2026/lundbeck-receives-fda-fast-track-designation-for-lu-ah69593–an-
この領域での差別化が起きるポイントの1つとされているのが投与回数で、オーゼイフルは、患者を日中通して覚醒させるために1日2回の投与を必要としている。服用を忘れると眠気が早く戻るリスクがあるが、その時点で再度服用すれば今度は夜間ずっと眠れなくなる可能性がある。そのため1日1回投与を差別化ポイントとして開発している企業が複数ある。
また、Centessaのcleminorextonはナルコレプシータイプ1、タイプ2、特発性過眠症の三つの適応の承認を目指しており、重複や誤診が多いため三つの適応に対して一つの薬になることで優位性が生まれるとされている。
Centessaはリリーに買収されているため、GLP-1のオンライン診療プラットフォームであるLillyDirectについても適用できる可能性を示唆している。
一方でAlkermesは用量の幅と分割投与の選択肢を持つことを強みとしており、市場を早く理解するために承認済みの非オレキシン系ナルコレプシー治療薬Lumryzを持つAvadel Pharmaceuticalsを21億ドルで2025年10月に買収している。
https://www.fiercepharma.com/pharma/alkermes-pays-21b-acquire-avadel-and-its-long-acting-narcolepsy-drug-lumryz
ただし、記事によれば、あくまで「現時点での最大の可能性は、過眠症を持つ人々という小さなニッチ領域」という意見も引用されている。(米国睡眠医学会の元会長)