What Really Changed on the Day a Robot Ran 100 Meters in 8.64 Seconds|ZERO ─ 科学と事業のあいだ で – note


2026年8月22日の夜、北京の国家スピードスケート館で、人型のロボットが100メートルを9秒39で走り抜けた。ウサイン・ボルトが持つ9秒58を下回る数字である。
第二回世界ヒューマノイドロボット運動会の開会式で行われた予選の一場面だった。会場は2022年の冬季五輪でスピードスケートが行われた建物で、主催は北京市人民政府と中央広播電視総台などが名を連ねる。六大陸16か国から666チーム、2,056台のロボットが集まり、26日までの五日間で51種目、1,301試合を戦う。
中国からは157社、641チーム、1,975台が出場した。海外からの参加は25チームで、第一回より56%増えている。ブラジルはロボットサッカーの世界大会で優勝経験を持つ五つのチームを集め、代表連合を組んで乗り込んできた。
同じ夜、80台のロボットが自律で隊形を変えて「BEIJING」の文字を描き、36台が五本指のハンドで電子管楽器やマリンバを演奏して、人間のオーケストラと合奏していた。
25日の準決勝で8秒台に入り、26日の決勝では天骄隊の機体が8秒64でゴールした。小型組の優勝記録は11秒98である。

第一回は2025年8月、同じ会場で開かれた。100メートルの優勝記録は21秒50である。
400メートルは1分28秒03から38秒15へ、1500メートルは6分34秒40から2分21秒64へ、立ち高跳びは0.96メートルから3.40メートルへ動いた。走種目は所要時間が2.3倍から2.8倍のペースで縮み、立ち高跳びは3.6倍に伸びている。走り幅跳びでは7メートル97を跳んだ機体が出た。
走る動作は、片脚で体を支えながら重心を前へ運び続ける必要がある。跳ぶ動作より制御の条件が厳しく、伸び幅もそのぶん小さい。
なお競技は機体の大きさで組が分かれる。100メートルの8秒64は大型組の記録で、小型組は11秒98である。同じ種目でも、体格が違えば求められる設計も変わる。
400メートルの38秒15は、ファン・ニーケルクが2016年のリオデジャネイロ五輪で出した43秒03より速い。1500メートルの2分21秒64も、ヒシャム・エルゲルージが持つ3分26秒00を1分以上下回る。立ち高跳びの3.40メートルも、ハビエル・ソトマヨルの2メートル45を上回る。ただし計測の条件は人間の陸上競技規則と同じではなく、とくに立ち高跳びはバーを越える走高跳と測り方が異なる。数字をそのまま並べて優劣を語れる関係にはない。
天工Ultraを開発した北京人形機器人創新中心の制御アルゴリズム上級エンジニア、趙文氏によれば、短距離走の機体には専用の設計を施した。ハーフマラソンを走るときに積む大容量の電池と空冷や液冷の装置は、100メートルでは要らない。そのぶん軽くなり、瞬発力が上がる。加えて電池の放電を速め、自社製の関節のトルクとモーターの回転数を引き上げた。ハードウェアの水準が能力の天井を決める、というのが同氏の説明である。
2025年4月、同じ天工Ultraは21.0975キロメートルを2時間40分42秒で走り、ヒューマノイドとして初めてハーフマラソンを完走した。その1年後、2026年4月の同じ大会で自律走行の部門を制したのは、携帯電話メーカーのHonorが自社開発した身長169センチの機体「閃電」である。記録は50分26秒で、上位6台をすべて同社の機体が占めた。「閃電」には液冷の放熱機構が積まれている。長い距離では、熱をどう逃がし、電池をどう持たせるかが順位を決める。
「閃電」は大会前の実測で、100メートルを9秒32、最高速度14.5メートル毎秒を記録している。参入から一年ほどの企業が、この水準に届いている。
400メートルの小型組で優勝した天工Omniは、腕を顔の前で固めたまま腰を大きく振って走る。中国のソーシャルメディアでは「恥ずかしがりの走法」と呼ばれて広まった。
この走り方は、強化学習から現れたものである。
いまのロボットの運動制御には、強化学習という手法が広く使われている。計算機の中に物理法則を模した環境を作り、そこで機体を何百万回も動かす。速く走れた動きには高い点を、転んだ動きには低い点を与え、点が高くなる動きを機体自身に探させる。人が姿勢を指示するのではなく、条件のもとで最も成績が上がる動き方を機械が見つけ出す。
開発責任者の郭宜劼氏によれば、肩のトルクなど関節の制約がある状態で速度を最大にしようとした結果、機体は腰の捻りで脚の振り出しの慣性を打ち消す動きにたどり着いた。同じ枠組みでも、場面が変われば別の走り方が出てくるという。人間の走者が腕を振るのは、脚の回転で生じる体のねじれを打ち消すためである。腕を使えない条件を与えられた機械は、腰で同じ役割を果たす方法にたどり着いた。
同氏はあわせて、機体そのものの運動能力はすでに相当な水準に達しており、次の課題はそれを信頼して使えるものにすることだと述べている。
第二回では100メートル、400メートル、1500メートル、4×100メートルリレーのすべてが全自律の種目になった。遠隔操縦は認められず、操作員が出せるのは開始の指令だけである。第一回の100メートル決勝で全区間を自律で走った機体は、1台だった。
規模も一年で変わった。参加チームは280から666へ、ロボットは500台超から2,056台へ、種目は26から51へ、日程は三日間から五日間へ広がっている。会場には200の充電キャビネットが並び、1,200個以上の電池を同時に充電できる態勢が組まれた。修理ステーションは24か所ある。運営の設備そのものが、参加台数の桁が変わったことを示している。
1500メートルは、100メートルの瞬発力と、マラソンに近い持久力の両方を要求する。高速でカーブを曲がるとき、機体の構造部材には大きな力がかかり、各関節を協調させる制御の負荷も上がる。加えて走り続ければ熱が溜まる。速度配分、カーブの処理、放熱、そして最後まで崩れない姿勢を、外からの指示なしに機体が自分で処理しなければならない。
実際の作業を競う場景種目には、得点の係数がついた。全自律で完了した場合が1.0、遠隔操縦の場合が0.5である。組織委員会の委員で中国ソフトウェア評価センター副主任の鞏瀟氏は、係数に二倍の差をつけたのは、ロボットに人と協働する助手になってほしいからだと説明している。
競技の区分も整理された。第一回にあった表演と外囲の枠は競技の側に吸収され、競技30種目と場景21種目の二区分になった。場景種目は全体の四割を超え、工業、ホテル、家庭、物流、消防救援など九つの領域に及ぶ。
巧緻ハンドの専門種目では、粉末を20グラム、誤差0.5グラム以内で取り分ける。ピンセットで大豆を一粒ずつ掴んで移す。USBのケーブルと対応する差込口を見分けて挿す。見本どおりにブロックを20個積み上げ、構造を保つ。持ち時間は五分である。
飲食の種目はさらに長い。20分のあいだに、その場で受けた音声の注文を理解し、食品用のトングで品物を取り、必要なら電子レンジで加熱し、200ミリリットル以上の飲み物を注いで受け渡しの区画まで運ぶ。緊急対応の種目では、通路の障害物を四つ片づけ、窓を二枚開け、隔離用の支柱を二本立てる。
ホテルの種目では、荷物の運搬、客室への備品の補充、部屋の片づけを続けて行う。そのあいだに狭い扉と通路を抜け、ドアの取っ手やエレベーターのボタンといった小さな対象を見分ける必要がある。図書館の種目は、書庫からの取り出し、棚への戻し、置き間違いの発見までを一つの流れとして扱う。今回はこのほかに、家庭での衣類の片づけ、火災現場での消火作業、小売店での惣菜の調理が新たに加わった。
作業は20分から30分の持ち時間のなかで順番どおりに進める必要があり、一つの工程が基準に届かなければ得点にならない。飛ばして先へ進むこともできない。工程が長いほど、認識の誤差と掴み損ねと位置のずれが積み上がる。
格闘の種目では、二台のロボットが互いに反対方向へ歩き去っていった。パンチは空振りが多く、蹴ろうとした機体が先に重心を崩して倒れた。サッカーでは味方に出さずにボールを場外へ蹴り出す機体があり、短距離走では急停止ができず、ゴールの先に置かれた空気の壁に当たってようやく止まった。当たった衝撃で火花が散った機体もある。太極拳では体が揺れ続けた。
速く走ること、強く跳ぶことは、この一年でかなり進んだ。相手の動きを読むこと、状況が変わったときに立て直すことは、そこまで進んでいない。前者は主に機体と制御の話で、後者は判断の話である。
智元機器人で製品ラインを統括する曹旭氏は、この差を時間の問題として見ている。卓球の種目について、機体が学習を始めてから二か月あまりでこの水準に届いたと話す。人間が二か月練習しても大きくは変わらない、という比較である。ロボットには既製の大規模なデータがないため、まず蓄積する作業が要る。実際の現場での運用が増えれば良質なデータが集まり、それがモデルの改良と機体の改良に戻っていく。今年見えた不足は来年には消えているかもしれない、と同氏は言う。
鞏瀟氏は、予選での全自律の完遂ぶりは予想を上回ったとしたうえで、こう付け加えている。ロボットが触れる物の材質や硬さ、置かれた角度がわずかに変わるだけで、自律の判断はずれうる。デジタルの世界のモデルは何度でも訓練できるが、物理の世界に標準解答はない。
記録は技術の上限を示す。事業として問われるのは下限のほうで、両者は別の数字である。8秒64は前者に属する。
この大会が残したのは記録の一覧ではなく、合格ラインの提示だったと考えている。自分で判断して、決められた手順を、途中で落とさずに最後まで運ぶ。全自律1.0という係数は、その基準を数字にしたものである。
閉幕式では、五日間の稼働データと動作の記録をまとめたデータセットが公開された。666チームのロボットが同じ環境で同じ課題を繰り返し、掴み損ね、転び、判断を誤った記録である。物の位置が少しずれたとき、指が滑ったとき、視界が遮られたとき。現実の環境で必要になるのは、そうした失敗の記録のほうだ。数千時間分の運転と数万回分の動作が、五日間で一度に集まった。競技場は、失敗を高い密度で作り出す装置として働いている。
一年前、100メートルの目標は無事に完走することだった。いまは8秒64である。この一年の変化の大きさを見れば、来年また記録が塗り替わることは想像がつく。
係数1.0の課題を、何台の機体が最後まで完了できたか。20分の工程を、途中で止まらずに何回に一回通せるか。工場や店舗が導入を決めるときに見るのは、この二つである。次の大会でこの種類の数字が発表されるようになったとき、ヒューマノイドロボットは見世物から設備に変わり始めたと言える。
新華社「人形机器人百米成绩超人类世界纪录」(666チーム、2,056台、51種目1,301試合、新設種目) https://www.news.cn/tech/20260822/4a6c82a5841943eeba95f721639cac16/c.html
科技日報「赛事全面提质升级 第二届世界人形机器人运动会开幕」(競技30種目・場景21種目、外囲賽の廃止、九つの領域) https://www.stdaily.com/web/gdxw/2026-08/22/content_568213.html
中国新聞網「世界人形机器人运动会迎第二个比赛日 专家解读赛事规则」(巧緻ハンド、飲食、緊急対応の課題、得点係数1.0対0.5、鞏瀟氏の説明) https://www.chinanews.com.cn/sh/2026/08-23/10682738.shtml
新浪「机器人运动会2.0,赛出了哪些新亮点?」(トラック種目の全自律化、粉末20グラム±0.5グラム、持ち時間五分、鞏瀟氏の材質・角度に関する発言) https://news.sina.com.cn/c/2026-08-25/doc-inipnpyw9744459.shtml
科技日報「加速跑 世界人形机器人运动会启幕」(場景種目が四割超、姜広智局長の発言) https://www.stdaily.com/web/gdxw/2026-08/23/content_568252.html
百度百科「2026世界人形机器人运动会」(主催者、中国からの参加内訳、ブラジル代表連合、充電設備と修理ステーションの規模) https://baike.baidu.com/item/2026世界人形机器人运动会/67773123
新京報/新浪「一场机器人运动会的”赛场之外”」(国際参加25チーム、第一回比56%増) https://finance.sina.cn/stock/jdts/2026-08-21/detail-iniparan1381673.d.html
百度百科「2025世界人形机器人运动会」(第一回の規模:280チーム、26種目、487試合、500台超、三日間) https://baike.baidu.com/item/2025世界人形机器人运动会/65667422
新華社「8秒64,机器人”百米飞人赛”实现突破」(100メートル決勝 大型組8秒64、小型組11秒98) https://www.news.cn/photo/20260826/a659737a9e8a461f969b11a1f5914727/c.html
新華社「第二届世界人形机器人运动会多项纪录被破」(第一回との対比:21秒50、1分28秒03、6分34秒40、0.95641メートル) https://www.news.cn/sports/20260827/9405acb738244569837ce7c7bc729e39/c.html
央広網「第二届世界人形机器人运动会比赛继续进行」(400メートル大型組38秒15) https://www.cnr.cn/china/news/20260824/t20260824_527788857.shtml
新華社(写真速報)「2026世界人形机器人运动会赛况」(400メートル小型組45秒66、1500メートル2分21秒64、走り幅跳び7メートル97) https://www.news.cn/sports/20260824/f6eaa13b7b434f2cb47134e34cb606ae/c.html
新浪科技「向”实用”更迈进一步,第二届世界人形机器人运动会落幕」(100メートル小型組11秒98、立ち高跳び3.40メートル、閉幕式でのデータセット公開) https://finance.sina.com.cn/tech/roll/2026-08-28/doc-inipwnxt9955102.shtml
OFweek「第二届人形机器人运动会:四项人类田径纪录,被机器人集体改写」(ボルト9秒58、ファン・ニーケルク43秒03、ソトマヨル2メートル45) https://robot.ofweek.com/2026-08/ART-898890-8120-30699866.html
新華日報 交匯点「人形机器人运动会到底比什么?」(1500メートルの人間の世界記録3分26秒00、走り幅跳び7メートル97) https://www.xhby.net/content/s6a8ceb3be4b027d1d0a3a3d1.html
新華社「机器人赛场”破纪录”,产业发展如何”长本事”」(趙文氏による電池の放電、関節のトルク、軽量化の説明) https://www.news.cn/fortune/20260826/dd378a7e49154aceb50c6ed39bd0244e/c.html
北京商報「”冰丝带”里的大厂竞速」(郭宜劼氏による「顔を覆う走法」の説明、第一回で全自律走行が1台だった事実、天工Ultraのハーフマラソン2時間40分42秒、次の課題に関する発言) https://xinwen.bjd.com.cn/content/s6a8c6514e4b03fa51a83557a.html
新浪「视频丨打破多项纪录!第二届世界人形机器人运动会在比什么?」(1500メートルが要求する能力、カーブでの構造と協調制御の負荷) https://news.sina.com.cn/zx/gj/2026-08-24/doc-inipkriv0119792.shtml
騰訊新聞「荣耀人形机器人”闪电”百米测试跑出9秒32」(100メートル9秒32、最高速度14.5メートル毎秒) https://news.qq.com/rain/a/20260822A07CET00
IT之家「荣耀机器人打破人类半马纪录」(「閃電」の身長169センチ、液冷放熱、50分26秒、上位6台の独占) https://www.ithome.com/0/940/862.htm
上海観察「智元把”上班用”的机器人拉去比赛,拿了双榜第一」(ホテル種目の作業内容、20分から30分の持ち時間、工程の順序と得点条件) https://newsghexport.shobserver.cn/html/baijiahao/2026/08/28/4046319.html
新浪「网球界来了个”铁打的”新球星」(家庭での衣類整理、消火作業、惣菜製造の新設、36台の五本指ハンドによる楽器演奏) https://news.sina.com.cn/gov/2026-08-25/doc-inippmeu2244809.shtml
華夏時報「直击世界人形机器人运动会:高光与窘态之间,人形机器人距离实用还有多远」(格闘、サッカー、短距離走、太極拳の場面、曹旭氏の卓球に関する発言) https://www.163.com/dy/article/L56QVSA10512D03F.html
新華日報 交匯点「跑进”9秒时代”,腾空2.8843米,人形机器人运动会究竟在比什么?」(開会式でのBooster T2の80台による隊形演技) https://www.xhby.net/content/s6a8aecb9e4b0f3986ee8772b.html
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