The Real Issue of Physical AI as Shown by Xiaomi's Robot '98% Success Rate in 4 Months of Factory Training' – note


10倍速の映像のなかで、2台のヒューマノイドロボットが空のコンテナを黙々と畳んでいます。指先で小さな留め具を外し、両腕で折りたたみ、隣のロボットと呼吸を合わせて物流を回す。先日この動画をXに投稿したところ、28万回以上見られました。
Xiaomiのヒューマノイドロボットが自動車工場で「空コンテナの折りたたみ・回収」作業を開始し、現在の作業成功率は90%。
注目すべきは箱を畳めることではなく、小さな留め具を指先で解除し、両腕で折りたたみ、他のロボットと協調して物流を回す一連の工程をこなしている点です。… pic.twitter.com/CeGXhMz9IS
ただ、この話の本当の意味は「箱が畳めた」ことではありません。むしろ、この作業ログが小米(Xiaomi)という一社の内側だけに溜まり続けているという事実のほうにあります。そして、この構造を持てる企業は、世界に数社しかありません。
7月に入ってから、Xiaomiはロボット事業の進捗を3日連続で外部に出しました。まずは、そこで公開された数字を淡々と並べます。
7月14日。 雷軍氏が、自社の自動車工場でヒューマノイドロボットが4か月間「実習」していたことを公表。中心になっているのはスタッド装着工程です。
作業の中身はこうです。専用の供給機からスタッド(植込みボルト)を1本ずつ取り出し、自動締結台の四隅に置いていく。部品には角が4つあるので、それぞれに1本ずつ。その後の締結設備が、それらを車体の後部フロアパネルに固定します。
この工程の左右両側の作業成功率が、4か月の反復のなかで90.2%から98%へ上がりました。工場が求める人手の良品率まで、残り1ポイントというところまで来ています。
同時に「新しい実習先」を2つ解禁したとしています。中央コンソールの側面カバーを整列させる工程と、空になった通い箱(コンテナ)を折りたたんで回収する工程。冒頭の動画がこの後者です。いずれも成功率は90%に到達したとされています。
この2つ目の工程が地味に難しいようです。カバーは大きく、柔らかく、形も不規則だからです。公開された映像では、手が届かない位置にある材料に対して自分で持ち替えの姿勢を変え、引っかかったときには自力で復帰しています。
そして紙の作業指示書を介さず工場システムに直結してタスクを受け取り、複数台が組んで作業する。「ロボットが器用になった」という話より、工場の情報系に接続されたという点のほうが、実装としては重い意味を持ちます。
7月15日。 データ生成モデル Xiaomi-Robotics-U0 をオープンソース公開。テキストからの画像生成、画像編集、フィジカルAI向けのシーン生成、機体間の転移、ロボット操作動画の生成を、ひとつの枠組みにまとめたものです。狙いは明快で、ロボットの学習データを生成モデル側から供給し続ける仕組みをつくることにあります。
7月16日。 基盤モデル Xiaomi-Robotics-1 を発表。10万時間を超える実機の操作軌跡で事前学習し、そこに機体をまたいだデータで後訓練を重ねています。RoboCasa365とRoboDojoという2つのベンチマークで総合1位を取ったとしています。
この直前、5月にも実績が出ています。CVPR 2026 WorkshopsのRoboChallengeでは、匿名モデル「my16」がタスク成功率40.89%で1位。40%を超えたのはこの1つだけで、2位と3位はどちらも21.33%でした。ICRA 2026のAGIBOT WORLD CHALLENGE全身制御トラックでは、99.2点・成功率94%で1位を取っています。
つまりこの数か月で、Xiaomiは「工場での実運用」「データ生成の仕組み」「基盤モデル」「学術ベンチマーク」を、ほぼ同時に並べてきたことになります。ここまでが公開されている事実で、思いの外進歩しているという印象を受けるでしょう。
ここからが本題。98%という数字は、そのまま「あと1%で工場に導入できる」という話ではありません。
WAIC 2026の期間中、雷峰網がXiaomiロボティクスのバイオニック操作責任者・游洋威氏に取材しています。ハルビン工業大学で学士・修士、イタリア技術研究院(Istituto Italiano di Tecnologia)で博士号を取得し、長くロボットの運動制御アルゴリズムをやってきた人物です。この取材のなかで、彼自身が非常に率直なことを言っています。
現在この工程には、ロボットが2台必要です。以前は作業員1人でこなしていた作業です。
理由は動作の粒度にあります。人間の作業員は片手でスタッドを2本まとめて掴み、連続して置き、そのまま身体を反転させて反対側を処理します。一方でロボットは、グリッパーで1本掴んで1本置く、を繰り返す。この差が、そのまま台数の差になっています。
成功率という指標は、この効率の差を一切表現しません。工場が本当に見ているのは、成功率と、製品の良品率と、タクトタイムの3つです。游洋威氏も「ラインに入るには決められた時間内に全動作を終える必要がある」とはっきり述べています。モーションプランニング、モーターの応答、実行効率のすべてがラインのリズムに追いつく必要があり、98%は3つのうちの1つが到達しただけの数字です。
もうひとつ。「実習」から「正社員」への昇格基準について聞かれた彼の答えが、この件の温度感をよく表しています。要約すると、工程ごとに求められる成功率も良品率もタクトタイムも違うので、統一の基準は設定しにくいので、「正式に入れるかどうかは工程ごとに判断するしかない」。
これは逃げではなく、実態としてそうなのだと思います。ただ裏を返せば、98%という数字は特定の1工程に固有の数字であって、量産導入や横展開を保証するものではないということ。
Xiaomi側もそこは織り込んでいて、現在は2本の路線を並行させていると述べています。ひとつは生産ライン上のタスクで、タクトタイム・安定性・成功率のすべてが厳しく問われる領域。もうひとつは、タクトタイムの要求は緩いものの操作の難度が高い領域─柔らかい物の取り扱い、隙間からの取り出し、折りたたみ、細かい力加減が要るような作業です。
物流エリアの仕分け・整列・通い箱の折りたたみは後者にあたります。冒頭の動画が「ラインではなく物流エリア」なのは偶然ではありません。入りやすいところから入っているわけです。
余談ですが、中国国内の反応も一枚岩ではありません。同じニュースを扱ったWeChat公式アカウントのコメント欄には「雷氏の発言は一律ホラ話として見ている」といった書き込みが普通に並んでいます。工場の現場に近い層ほど、この手の発表に対しては冷めています。深センにいて感じるのは、期待と冷笑が同じ速度で走っているという空気です。
日本でヒューマノイドロボットの話をすると、まず出てくるのはバック宙する動画や、カンフーを披露する動画。あれと、工場でスタッドを置いている機体は、もう別の生き物になりつつあります
游洋威氏はこれを「運動員型(アスリート型)」と「服務員型(ワーカー型)」と呼んで整理しています。この分類が、私は今回の取材で一番実用的な視点だと思いました。
アスリート型をつくるなら、瞬発力が要ります。モーター、関節、運動制御のすべてに高い要求が乗ってきますし、高ダイナミックな動作に特化した訓練も必要です。一方、工場で搬送や組付けをするワーカー型に、その瞬発力は要りません。要らないなら、ハードウェアコスト・可搬重量・消費電力のバランスを最適化できます。
彼はこれを車にたとえています。オフロード車でも街中は走れるものの、燃費が悪い。同じように、運動能力の高いロボットでも工場の作業はこなせますが、電力消費・稼働時間・コストの面で、はたして適切かというと別問題だ、と。
さらに面白いのは、この違いがハードウェアの選定そのものを変えるという指摘です。ダンスや高ダイナミック動作を狙う機体は、相対的に背が低くなる傾向がある。体操選手にあまり長身がいないのと同じ理屈で、小さい身体のほうが高速な動作に向いているからです。
ところが工場作業は要求が真逆です。工程ごとに、必要な身長、腕の到達範囲(アームリーチ)、可搬重量、作業空間の制約が具体的に決まっています。そこに合わせて技術的なトレードオフを取らざるを得ません。そして現時点の技術水準では、この2つを1台に高いレベルで融合させるのは難しい、というのが彼の見立てです。
ここは日本にとって重要な補助線になります。中国のヒューマノイド関連の動画を見て「もうここまで動けるのか」と評価するとき、その機体がアスリート型なのかワーカー型なのかで、意味がまったく変わります。前者の派手さは後者の実用性をほとんど保証しません。逆に、映像的には地味なワーカー型のほうが、産業へのインパクトははるかに大きい。
ちなみにXiaomiは「将来的にアスリート型をやる可能性を排除していない」としつつ、今後5年は工場での大規模適用を最優先すると明言しています。この優先順位の置き方自体が、同社のポジションを物語っています。
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