
眠っていたデータから新たな付加価値を
大阪府
エリア・施設分析
レベニューマネジメント
大阪府のホテル市場では、2026年9月の推定成約ADRが確定した。ビジネスホテルは¥8,872(N=504)で前年同月の¥13,450(N=498)から−34.0%、シティホテルは¥13,077(N=97)で前年同月の¥16,733(N=91)から−21.8%と、いずれも大きなマイナスになっている。ただし前年の2025年9月は大阪・関西万博の会期(2025年4月13日〜10月13日)にあたり、比較の土台そのものが例年より高かった。実際、万博前の2024年9月と並べると、ビジネスホテルは+1.0%、シティホテルは+15.4%と、水準はむしろ2年前並みかそれ以上に戻っている。本稿では、前年比・2024年同月比・推定OCCの3本の物差しを重ね、万博の反動局面でレベニューマネージャーが基準線をどこに置くべきかを読み解く。
対象: 大阪府のビジネスホテル N=504施設・シティホテル N=97施設(いずれも2026年9月の推定成約ADR算出対象)。本記事の価格指標は推定成約ADR(OTA等の販売データから推定される成約価格水準・税抜相当)、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値。いずれも定義は記事末尾。データ時点: 2026年10月26日。
まずは確定月同士の前年比から整理する。ビジネスホテルの推定成約ADRは、2026年6月が¥7,884(前年同月比−32.8%)、7月が¥8,429(同−31.9%)、8月が¥8,772(同−33.6%)、9月が¥8,872(同−34.0%)と、4か月続けて3割を超える下げ幅で推移した。シティホテルは6月の−26.3%から7月−25.1%、8月−24.4%、9月−21.8%へと下げ幅が少しずつ縮まっており、価格の戻り方には業態差が出ているといえる。
ただし、この数字だけで「大阪の単価が崩れた」と読むのは早い。前年の2025年は4月13日から10月13日まで大阪・関西万博が開かれており、2025年4〜9月の推定成約ADRは、ビジネスホテルで2024年同月を35.6〜53.1%、シティホテルで27.6〜47.6%上回っていた。前年比のマイナスは、この一時的な山を差し引いた結果と読むのが自然だろう。万博翌年の前年比を前々年比とどう組み合わせて扱うかは、大阪の推定成約ADRは前年比−25%、前々年比は+1.6%でも整理している。
そこで2つ目の基準線として、万博前の2024年同月と比べた変化率を下の表に並べた。ビジネスホテルの2026年4〜9月は2024年比で−5.5%〜+6.5%の範囲に収まり、9月は+1.0%とほぼ横並びである。シティホテルも6月(−6.0%)と8月(−0.9%)を除けば2024年を上回り、9月は+15.4%となった。もっとも2024年9月のシティホテルは¥11,336と前後の月より低い水準だったため、9月の+15.4%は割り引いて読む必要がある。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・税抜相当。全月とも確定値)
4〜9月の6か月を単純平均すると、ビジネスホテルは2024年¥8,951、2025年¥12,846、2026年¥8,917で、2026年は2024年比−0.4%とほぼ同水準に戻った。シティホテルは2024年¥12,103、2025年¥16,144、2026年¥12,579で、2024年比+3.9%と2年前をわずかに上回っている。前年比で見えるビジネスとシティの差(−3割強と−2割強)は、万博期間にビジネスホテルの単価がより大きく跳ね上がっていた(6か月平均で2024年比+43.5%、シティは+33.4%)ことの裏返しでもある。同じ9月のビジネスホテルを全国で並べると大阪の位置づけがより見えやすく、その比較はビジネスホテルの推定成約ADR、2026年9月は44都道府県が前年超えで詳しく分析している。
月次の推移を年ごとに重ねると、構図はさらにはっきりする。ビジネスホテルの2026年の線(濃い青)は、4月以降ほぼ2024年の線(灰)に沿って動いており、2025年の線(淡青)だけが会期中に大きく浮き上がっている形だ。10〜12月の点線は現時点の販売状況に基づく推定で、確定値とは算出の基準が異なる。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府ビジネスホテル・推定成約ADR、N=484〜504。2026年10〜12月は現時点推定)
シティホテルも基本の形は同じだが、2026年の線は2024年の線よりやや上を走る月が多い。業態としての単価の底上げが、万博の反動を挟んでも一部残っていると読める。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府シティホテル・推定成約ADR、N=83〜97。2026年10〜12月は現時点推定)
注意したいのは、確定月と現時点推定の継ぎ目だ。ビジネスホテルの10月は現時点推定で¥11,111(N=499)、11月は¥11,100(N=496)、シティホテルは10月¥15,844(N=97)、11月¥15,131(N=97)となっている。9月の確定値から見ると大きく持ち上がって見えるが、現時点推定は販売中の状況から算出しており、確定値と並べると段差が出やすい。このため、10月以降は前年同月との変化率を計算せず、水準の目安としてのみ扱う。確定値との単純比較は月末の確定を待ちたい。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(現時点推定は2026年10月26日時点の販売状況に基づき、今後変動し得る。2024年同月は確定値で、算出基準が異なるため変化率は示さない)
単価が2024年並みに戻ったとき、気になるのは稼働の側だ。2026年9月の推定OCC(OTA掲載在庫ベース)の月平均は、ビジネスホテルが80.0%(対象285〜300施設・客室47,820〜49,130室)、シティホテルが82.0%(対象34〜40施設・客室7,905〜9,042室)だった。同じ年の6月はビジネス77.1%・シティ79.5%、7月は81.1%・83.9%、8月は80.1%・83.6%で、夏から秋にかけて8割前後の水準を保っている。
9月の中で目立つのは、9月19日(土)から23日(水・秋分の日)の5連休だ。連休中日の20日(日)は推定OCCがビジネス・シティとも100.0%、21日(月・敬老の日)もビジネス98.3%・シティ98.8%と、掲載在庫がほぼ消化された。一方、連休最終日の23日はビジネス66.2%・シティ74.6%まで下がっており、需要の山と谷が数日のうちに入れ替わる構図である。曜日別の平均でも、ビジネスは土曜86.3%に対し日曜76.0%と、10ポイント強の差がついた。5連休の日別の動きを他エリアと並べた検証は、シルバーウィーク2026実績|7エリア×4業態の日別検証も参考になる。
直近の予約の積み上がり方も確認しておく。下のブッキングカーブは、10月14日(水)と10月24日(土)の宿泊日について、宿泊日45日前から前日までの推定OCCの推移を描いたものだ(ビジネス296〜297施設・客室約4.8万室、シティ41施設・客室9,873室)。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府・推定OCC=OTA掲載在庫ベース。ビジネスN=296〜297施設、シティN=41施設)
ビジネスホテルの10月14日(平日)は、45日前50.1%、30日前57.7%、前日92.3%と、45日間で+42.2ポイントを積み上げた。そのうち30日前以降が+34.6ポイントを占めており、平日は直前の1か月で埋まる型といえる。同じビジネスホテルでも10月24日(土)は45日前の時点で68.4%、30日前78.3%、前日95.6%と、早い段階から需要が入っていた。シティホテルは10月24日が45日前86.4%から前日98.1%、10月14日も77.8%から94.5%と、ビジネスに比べて初期水準が高く、上積み幅は小さい。
この先の宿泊日を、現時点までの観測で並べたのが次の表である。11月21日(土)は翌23日(月・勤労感謝の日)までの3連休初日にあたり、シティホテルは30日前の時点で96.9%に達している。一方、11月11日(水)はビジネス65.6%(17日前時点)にとどまり、平日と連休の差が鮮明だ。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定OCC=OTA掲載在庫ベース。ビジネスN=295〜297施設・客室48,470〜48,730室、シティN=41施設・客室9,873室。最新観測は2026年10月下旬時点)
ここまでを整理すると、2026年の大阪は「単価は2024年並みに戻し、稼働は8割前後を確保している」局面にあると読める。前年比の大きなマイナスだけを見て値下げを重ねるより、2024年を基準線に置き直したうえで、需要の強い日に単価を戻す余地を探るほうが筋がよいだろう。
1. 予算と実績の比較軸を「前年」から「2024年」に切り替えたい。前年比のビジネス−34.0%・シティ−21.8%は、万博会期という特殊な年との比較である。社内の予実管理や本部報告で前年比だけを使うと、実態以上に悪く見え、不要な値下げ判断を招きかねない。2024年同月比(ビジネス+1.0%・シティ+15.4%)を併記する形に整えておくと、議論の土台がそろう。
2. 市場の推定成約ADRを自館の「下限の目安」として照らしたい。9月の市場水準はビジネス¥8,872・シティ¥13,077だった。自館の同月の実績単価がこの水準を大きく下回っている場合、稼働を取りに行く価格設定が市場より深く入っている可能性がある。逆に上回っていれば、立地や商品力で単価を維持できている証拠として扱える。
3. 連休と平日で価格の動かし方を分けたい。9月の5連休中日は推定OCCがビジネス・シティとも100.0%に達した一方、連休最終日は6〜7割台に下がった。11月21日からの3連休もシティホテルが30日前で96.9%に達しており、需要の強い日は早めに単価を戻す余地がある。平日は直前1か月の上積みが大きいため、早い段階で安値を確定させすぎない運用が考えられる。
4. 10月以降の現時点推定は「水準」としてだけ使いたい。10月・11月の現時点推定はビジネス約¥11,100、シティ¥15,000台と9月確定値より高く見えるが、算出の基準が違うため段差が出やすい。月末の確定を待ってから前年・2024年と比較し、評価をやり直す手順を組んでおくと誤読を防げる。
第一の物差しは「前年比と2024年比を必ず併記する」ことだ。確定9月の前年比はビジネス−34.0%・シティ−21.8%だが、2024年比ではビジネス+1.0%・シティ+15.4%となり、見え方は大きく変わる。第二は「単価と推定OCCを組で見る」ことで、9月の推定OCCはビジネス80.0%・シティ82.0%と8割前後を保っており、需要そのものが失われたわけではない。第三は「確定値と現時点推定を混ぜない」ことである。10月以降の数字は月末の確定を待って評価し直す必要がある。
万博閉幕から1年が経ち、2026年の秋から2027年春にかけては、前年比が大きなマイナスで出続ける期間が続くと考えられる。数字の符号に引きずられず、2024年という平時の基準線と日々の予約の積み上がりを手がかりに、単価を戻せる日を一つずつ拾っていきたい。
Q. 大阪の2026年9月の推定成約ADRはどのくらいですか。
A. 確定値でビジネスホテルが¥8,872(N=504)、シティホテルが¥13,077(N=97)です。前年同月比はそれぞれ−34.0%、−21.8%でした。
Q. 前年比のマイナスはなぜこれほど大きいのですか。
A. 前年の2025年9月が大阪・関西万博の会期中で、単価が例年より高かったためです。万博前の2024年9月と比べると、ビジネスホテルは+1.0%、シティホテルは+15.4%です。
Q. 10月以降の数値も前年と比べてよいですか。
A. 10月以降は現時点の販売状況に基づく推定値で、確定値とは算出の基準が異なります。前年との比較は月末に確定値が出てから行うことをおすすめします。
Q. 推定OCCは実際の客室稼働率と同じですか。
A. 同じではありません。推定OCCはOTA掲載残室数から算出するOTA掲載在庫ベースの推定値で、掲載外の客室を消化済み側に数えるため実客室稼働率より高めに出ます。2026年9月の月平均はビジネス80.0%(285〜300施設)、シティ82.0%(34〜40施設)でした。
Q. 11月の連休と平日で販売の進み方に差はありますか。
A. あります。11月21日(土)からの3連休はシティホテルの推定OCCが30日前の時点で96.9%に達した一方、11月11日(水)のビジネスホテルは17日前時点で65.6%にとどまっています(いずれも2026年10月下旬時点の観測)。
■ データソース
メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(大阪府ビジネスホテル・シティホテルの月次エリア値、2024年1月〜2027年1月)、OTA掲載在庫ベースの日別推定OCC(2026年6〜9月泊)、宿泊日の45日前からのブッキングカーブ(2026年10月14日〜12月5日泊、最新観測は2026年10月下旬)。万博の会期は公式サイトおよびジェトロの公表による。
■ 試算前提
前年同月比・2024年同月比は確定月(2026年9月以前)同士でのみ算出し、10月以降の現時点推定値は変化率の算出に用いない。4〜9月平均は各月の値の単純平均。値は府単位で、市区町村別には分けていない。推定OCCとブッキングカーブは各宿泊日で同じ施設集合の固定コホートで、対象施設数・客室数を本文に併記した。
■ 限界・留意点
推定成約ADRはOTA等の販売データから推定した税抜相当の成約価格水準で、個別ホテルの実績単価とは一致しない。推定OCCは掲載外の客室を消化済み側に数えるため実客室稼働率より高めに出る。現時点推定は販売状況に応じて日々変動し、確定値との間に段差が出やすい。2024年9月のシティホテルは前後の月より低い水準で、同月比の+15.4%は基準月の影響を含む。
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