タンパク質は「コピー&ペースト」で機能進化 台湾・陽明交通大学|その他アジア等科学技術ニュース – Science Portal Asia Pacific


台湾の陽明交通大学(NYCU)は10月1日、同大学の研究チームが糖結合タンパク質「ガレクチン」の柔軟な領域を調べ、有用な配列の繰り返しを増やすことが、配列内の特定のアミノ酸の種類を変えるよりも、分子を集合させる上で大きな役割を果たすことを示し、タンパク質が機能を強化する進化の仕組みについて知見を得たと発表した。研究成果は学術誌EMBO Reportsに掲載された。
芳香族アミノ酸の違いにもかかわらず、ヒトとゼブラフィッシュのガレクチンの天然変性領域はいずれも分子の集合を支える。(AI生成イラスト)
タンパク質は精緻に折りたたまれた構造を持つと考えられがちだが、多くは単一の安定した形を取らない柔軟な「天然変性領域」も併せ持つ。NYCU生化学・分子生物学研究所のジエロン・ファン(Jie-Rong Huang)教授の研究チームは、ヒトのガレクチン-3を含む脊椎動物のガレクチンでこの領域を調べた。これらの領域の相互作用は、相分離と呼ばれる過程を通じてタンパク質を濃縮した集合体へとまとめ、糖を持つ分子を集める働きを助ける。
脊椎動物のガレクチンにおける天然変性領域の収斂進化を描いたイラスト。繰り返し配列が、種を越えて似た機能を生み出す様子を示す。(AI生成イラスト)
従来の短いペプチドを用いた研究では特定の芳香族アミノ酸の重要性が強調され、こうした分子の「粘着点」の種類が集合を強く左右すると考えられてきた。ところが種間で比較すると、異なる芳香族アミノ酸でも同様の機能を担えることがわかった。ヒトのガレクチン-3はチロシンに富む繰り返し配列を持つのに対し、研究チームが調べたゼブラフィッシュのガレクチンは主にトリプトファンを使う。いずれも分子の集合を促すことができる。
実験の結果、主要な要因として浮かび上がったのが繰り返し配列の数だった。繰り返しを増やすことは、芳香族アミノ酸の種類を変えるよりも、タンパク質の集合や分子の集積能力を大きく高めた。同教授はこの過程を、コンピューターの「Ctrl+C」「Ctrl+V」になぞらえる。短い有用な配列から出発し、複製を重ねることで相互作用する領域の数が増え、その効果が積み上がっていくという。
研究チームは、脊椎動物の異なる系統がそれぞれ独立にこれらの配列を増やし、似た集合機能へ収斂したと考えている。この知見は、機能モジュールの数を調整することでタンパク質の集合を制御するという、タンパク質工学や合成生物学への設計原理をもたらす可能性がある。
研究チーム。左から、博士課程学生のリン・ユーハオ(Yu-Hao Lin)氏、ジエロン・ファン(Jie-Rong Huang)教授、修士課程学生のチェン・ユーチェン(Yu-Chen Chen)氏
(出典:いずれもNYCU)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
発表論文: Lin et al. (2026) Evolution of intrinsically disordered regions in vertebrate galectins for phase separation
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