
半導体イメージ
AI(人工知能)向け需要の急増や地政学リスクの高まりを受け、政府が半導体の国産化を推し進める中、理化学研究所は2025年に「先端半導体科学プログラム(ASSP)」を発足した。次世代の計算基盤や量子イノベーション、AIを支える半導体デバイスの設計と集積技術の開発を掲げ、五つの研究チーム体制を敷く。日本発のメモリー技術や、科学研究にAIを活用する「AI for Science(AI4S)」のための半導体の開発などに企業と共同で取り組む。(藤木信穂)
ラピダス(東京都千代田区)の設立や台湾積体電路製造(TSMC)熊本工場の立ち上げが進み、政府は累計2兆円超を半導体分野に投じている。経済安全保障の観点から、関連する産業基盤が強化され、「理研は計算科学や量子技術の飛躍に加え、半導体デバイスの革新も不可欠だと考えた」と、黒田忠広プログラムディレクター(PD)はASSP設置の経緯を語る。
3次元集積メモリーシステムの研究チームは、配線を使わずに磁界でつなぐ磁界結合無線通信で、素子を立てて積層する「Z―Angle」(ZAM)メモリー技術を開発中。放熱性能を高め、積層数による制約を解消することで、容量拡大と帯域幅向上、低消費電力化を同時に狙う。
ZAMはソフトバンク全額出資子会社のサイメモリ(東京都港区)と米インテルが共同で開発し、29年度中の実用化を目指す。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに採択されており、サイメモリに出資する理研もそこに参画する。スーパーコンピューター「京」「富岳」の開発で培ったメモリーアーキテクチャー(概念設計)や評価技術を、ZAMの性能評価に生かす考えだ。
一方、プロセッサーの設計プラットフォーム研究チームは、科学技術振興機構(JST)の「次世代エッジAI半導体研究開発」事業で「AI4Sのためのエッジの知能化加速」を推進。分子動力学(MD)計算、ゲノム解析、機械学習の三つをターゲットに据え、東北大学や慶応義塾大学、ミタテゼプトテクニカ(東京都渋谷区)とプロセッサーを開発する。
AIベースの設計や粗粒度再構成可能アーキテクチャー(CGRA)、3次元実装を組み合わせ、スケーリング性能の限界や電力性能、設計の複雑化といった課題に、科学計算に特化した専用機で挑む。「汎用機に比べてケタ違いの計算効率を達成し、メニーコア時代の新規アーキテクチャー要素を科学の現場に応用させる」と黒田PDは将来を見通す。
半導体の研究開発と人材育成を行う最先端半導体センター(LSTC)にも、理研は構想段階から携わってきた。組合員として名を連ねるほか、五神真理事長はアカデミア代表として、専門人材の養成に深く関わる。
ASSPではほかにも先端集積デバイス、ヘテロジニアス集積、エッジAI通信アーキテクチャーのチームが活動する。産業界や大学を巻き込み、理研内の異分野ともつながる枠組みが、日本の半導体開発の一翼を担う。(随時掲載)
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