
オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は5月19日、同機構の研究者らが大規模太陽光発電所の立地、設計、保守を高度化し、農業との共存や発電効率向上につなげる研究を進めていることを発表した。
オーストラリアは2030年までに再生可能エネルギー比率82%を目指しており、大規模太陽光発電所は移行の中核を担う。同国では2050年までに、同発電所が電力の約25%を供給すると予測されている。CSIROは、農業など他の重要産業と再生可能エネルギー技術を両立させ、設計・材料の革新や人工知能(AI)の統合で効率と有効性を高めようとしている。
CSIROとウェスタンシドニー大学の研究者らは、1568通りのシナリオをモデル化し、発電量と農業収益性のトレードオフを定量化した。CSIROの研究科学者スティーブン・スノー(Stephen Snow)博士は、戦略的に立地を選べば、高価値の灌漑農地や集約的作付け地を太陽光発電に転換する必要はほぼなく、低収益の放牧地が候補になり得ると説明する。低収益の放牧地を使えば、農業利益への影響は年2900万豪ドルから260万豪ドルへ約90%低減できるという。
地主は新しい太陽光発電所から収益を得ることができる
CSIROの実験科学者ケンリック・アンダーソン(Kenrick Anderson)氏は、大規模発電所や次世代太陽光発電の計画に取り組む。高度なモデルは、発電所の性能把握に役立ち、1ヘクタール当たりの出力を最大化する配置計画や、太陽光追尾システムの改善に使える。大規模蓄電池との組み合わせでは、需要ピーク時に放電できるよう余剰電力を蓄える戦略にも役立つ。
CSIROの太陽光発電屋外研究施設
CSIROはさらに、風、熱、粉じんの動きを数値流体力学で解析し、反射防止技術を損なわず汚れや粉じんをはじく自己洗浄コーティングを開発している。オーストラリア先端太陽光発電センター(ACAP)との連携では、5%以上の効率向上が見込まれるシリコン・ペロブスカイト・タンデム太陽電池にも取り組む。
CSIROが開発した自己洗浄コーティングを太陽電池モジュールの表面に塗布した様子。水滴が玉状になることで、汚れや埃をはじく効果が視覚的に確認できる
(出典:いずれもCSIRO)
保守面では、カメラ、LiDAR、センサーを備えたAI搭載ロボットが、粉じん、鳥のふん、配線損傷、部品の緩み、パネル内のホットスポットを検出する。CSIROの上席主任研究科学者ペイマン・モガダム(Peyman Moghadam)博士は、ロボット、固定センサー、現場システムのデータを統合し、早期警戒や予防保全判断を支える太陽光発電運用の基盤づくりを進めていると述べている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
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